「僕は君と仲良くなれる気がするよ」



急に背後から声が聞こえて私は身を震わせて振り返った。
そこには見たことのない大柄なダームストラングの男が立っていた。
顔は、きれいだと思った。
しかし、なぜかその瞳に嫌な光が差しているのを感じて私は一歩後ろへ下がった。
この男は一体見知らぬ私などに何の用があろうか。



「そう怖がらないでくれ」

「誰なの…?」

「ああ、自己紹介が遅れたね。僕はエゴール・ホトキン」



男は私の前に手を差し出してきて、おそらく握手を求めたのだが、私はそれを真っ向から睨み、手は下に下したままでいた。
彼を誰かと質問したのは、別に彼の名前が知りたかったからではない。
彼が何者であり、何の目的で私に近づいてきたのか、というのがほしいのだ。



「機嫌を損ねてしまったかな」

「あなたが現れたこと自体が気分を悪くしているの」

「スリザリンらしいお嬢さんだ。君の寮の連中はみんなそうなのかい」

「どういう意味よ」

「たとえば…ドラコ・マルフォイとか」



思わぬ人の名前が彼の口から飛び出したので私は息を飲んだ。
そしてあの憎らしい女の顔も浮かんで、今までのことが走馬灯のように思い返されて胃がきりきりと痛むのを感じた。
そんな私を見て、目の前の男の口角がぐいと上がった。



「その反応は、嬉しいね」

「な、何がよ!それになんでドラコの名前を」

「君と手を組みたいんだ、ミス・パーキンソン」



今度は彼の口から私の名前が出た。
驚きのあまり自分の口が力なく開く。
男はまだあの嫌な光を目に宿らせながら私を見ていた。
口角をあげて、私の何かを見透かすように。



「手を組むって」

「互いの利益が一致するのさ。ミス・パーキンソン、君はドラコ・マルフォイとパーティーで踊りたいんだろう?そして僕はというと、ナマエ・ミョウジという女性と踊りたいと考えているんだ」



ナマエ・ミョウジ。
その名前を聞いて自分の体の全ての血管を流れる血が一周ぐるんと回るような感覚に陥った。
かすかに眩暈さえする。
ふつふつと怒りが湧き、寂しさが押し寄せ、悲しみが私を支配する。
憎悪、切なくて、やるせない、焦り、混乱、絶望。



「僕は君と仲良くなれる気がするよ」



男はもう一度復唱して、嫌らしくも大胆にあの笑みを見せた。















- - - - - - - - -
















「私…こんなにウエスト太かったかな」



私が呟くとエムリーヌが驚いたようにこちらを見た。
そして眉間にシワを寄せながらこちらへ歩いてきた。



「どうして?気になるの?」

「うん、少し…とてもドラコには言えなかったけど、あのドレス、少しだけウエストがキツくて」



先日、やっと私はダンスパーティに着ていくドレスを決めた。
それも自分ではなくドラコが決めてくれたのだが。
深緑のドレスは彼が言うとおりスリザリンの色で、それは私の胸を踊らせた。
しかし、問題はサイズだ。
ホグワーツに来る前のプロポーションならあのサイズで合っているはずだ。
つまりあのドレスがキツいということは。



「ナマエ、あなたこっちに来て太ったみたいね…」

「言わないで…本人である私が一番よくわかってるから…」



エムリーヌは呆れたような顔をしていた。
それもそのはず、彼女は自分の美貌を保つため日々努力を怠らないような人だからだ。
私のように海外に来て太るなんて論外なのだ。
太った原因は、いつも美味しいものを勧めてくるドラコ、と言っては彼に悪い。



「大丈夫じゃないウエストがキツいくらい。どうってことない」



モニクがブリティッシュ・ティーを飲みながら呑気に言っている。
いいなあ、モニクは。
紅茶にお菓子を死ぬほど堪能し、食事の際は男性を驚かせるほどたくさん食べるのに全く太らない。
それどころか、実は全て嘘なのではないかと思ってしまうほど細くて華奢だ。



「あーあ、これはダイエットだな…」



私の呟きは切なげに部屋に響いた。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -