僕の気分は最悪だった。
最悪という言葉以外に表しようがないくらいに僕は気分が悪かった。
いや、吐き気がするとでも言えるかもしれない。



対抗試合にホグワーツから出場する選手にポッターが選ばれたのだ。
いや、あれは選ばれたとは言わない、断じて言わせない。
当然とも言えるが、ダームストラングからはビクトール・クラム、ボーバトンからはフラー・デラクールが選ばれた。
両者ともそれぞれの学校でスター的な存在で、大広間では彼らに惜しみない拍手が送られた。
そして我らホグワーツからは、ハッフルパフのセドリック・ディゴリー。
あの劣等性の集まりであるハッフルパフから代表が出るとは僕らも納得がいかず、拍手もせずに口々に文句を言っていると、あのゴブレットやらからもう一枚紙が出てきたのだ。
それをあの頭のいかれたジジイが手に取って…



「くそっ!」



僕はすれ違う生徒に思いっきりぶつかってやった。
思い出すだけで苛立ちで僕の両手は小刻みに震える。
紙に、ポッターの名があったのだ。
あいつは年齢制限で出場する権利がないかずだ、なのになぜ。
違反だ、あ
いつは何かせこい手を使ったに違いない、インチキだ。
すれ違う生徒たちは皆、僕の顔を見て表情を強張らせる。
そして、僕を避けようとするので自然に僕の前には誰もおらず道ができていた。
それだけ僕の表情に出ているということか、それとも後ろのでかい二人のせいか、まあそんなことはどうでもいいのだが。



中庭に目をやると、そこにフラー・デラクールがいるのを見つけた。
やはり彼女は美人ばかりのボーバトンの中でも群を抜いて美しいと、僕は素直に思うのだった。
彼女の周りに他のボーバトンの生徒たちが集まって何か楽しそうに話している。
ふと、その中に見覚えのある顔があるのに気がついた。
あの時の、歓迎会の日に抱きとめたあの彼女だ。
同じタイミングでこちらを向いた彼女と目があってしまったが、視線をそらすことができなかった。
そらすタイミングを、見失ったからだ。
気まずさを感じたその時、彼女がふわりと微笑んだ。
確かに、この僕を見て。
心臓が止まりそうになりながら、自然と僕の口角も上がっていた。
フラー・デラクールが彼女の肩をたたいて何か話しかけている。
それにより彼女の視線は僕からフラー・デラクールに移り、僕は慌てて顔に浮かんだ笑みを消した。
後ろの二人は…気づいていないようだ。
胸を撫で下ろしつつ、いつもより早く鼓動している心臓を右手で押さえつけた。
人に対して身体がこんな反応を示したことはなく、戸惑いを隠せない。
軽く咳払いすると、後ろから小さく囁く声が聞こえた。



「なあゴイル、僕いまボーバトンの女の子に微笑まれたよ」

「違う!」



僕がいきなり振りむいたからだろう。
いや、僕がいきなり叫んだからか。
二人だけでなく周りの数人の生徒も驚いた目でこちらを見た。
しかしそんなことを構う必要はない。



「あれは僕に微笑んだんだ!」



無言で必死にこくこくと頷くクラッブを見て、僕はまた前を向いて歩きだした。
彼女は僕に、この僕に微笑んだんだ。
なんでこんな芋みたいなクラッブに微笑んだりしようか。
彼が勘違いしたことに腹が立つ。
ありえないが、もし彼女が本当に彼に微笑んでいたとしたら、もっと腹が立つ。



いつしか僕の苛立ちの対象はポッターから別の何かに移っていた。

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