「ナマエ起きて!早く!」



パンジーのキイキイとした声で目を覚ました。
カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。
昨日はあんなことがあって、なかなか寝付けなくて、たしか寝たのはかなり夜遅くだった。
うーんと唸り、目を擦りながら上半身を起こすと私の腕をパンジーが引っ張った。



「寝坊じゃない!きっとドラコが怒ってるわ」



はいはい、と心の中で呟く。
彼女は口を開けばドラコドラコだ。
私はそんなことを思いながらも身体は勝手に飛び起きて急いで支度をしているのだった。
そうだ、マルフォイが怒っちゃう。
素足のまま床に降りると、ひやりと冷たかった。



「あなたたち子分が来るのが遅いとすぐ不機嫌になっちゃうんだから、ドラコったら」



パンジーが髪をとかしながら言った。
やっぱり私は彼の子分か。
それもクラッブとゴイルとひとまとめ。
何も今さらがっかりすることじゃないけれど。
出そうになったため息を殺して準備を続けた。



「今年もダンスパーティがあるのよね」

「本当に楽しみ!」

「パンジーはマルフォイと踊るんでしょう?」

「うんきっと。誘ってくれるに違いないわ!」



パンジーとダフネ、ミリセントが楽しそうに話している。
私は少し顔を歪めた。
なんであれ、今年のダンスパーティでマルフォイは私と踊るんだ。
そんなこととも知らず、パンジーは満足げに言いいながらネクタイを締めていた。
私は大急ぎで支度をすませて鏡に向かう。
髪に軽く指を通した。
よし。



「ごめん、お待たせ」

「もう、ナマエったら遅いわ」

「ほら早く行きましょう」



四人で階段を下りて行けば、そこにマルフォイとクラッブ、ゴイルが待ち構えていた。
マルフォイが左の手首を指で叩き、遅いとジェスチャーで表した。
私は小さく謝る。
なんと言って怒られるだろうかと考えて下を向いてしまう。



「おはよう、ドラコ」

「ああ、おはよう」

「今年もダンスパーティがあるわね」

「そうだな」



パンジーは甘い声でマルフォイに言った。
彼は頷くだけだった。
私は聞いていて気が気じゃなかった。
もし私とマルフォイが踊ると知ったら怒り狂うに違いない。
今の彼女の表情を見ればわかる。
誘われなかったけど、いずれは誘われるという自信が顔に滲んでいるから。



女の子三人と別れを交わして私はマルフォイたちと合流した。
マルフォイは全然不機嫌じゃなくて拍子抜けした。
怒ってないの?とこっそりクラッブに聞いてみると、彼は口を尖らせて頷いた。
前を歩くマルフォイを見て、私は小さく息をついた。







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昨夜、ミョウジに僕と踊ることを了承させた僕は上機嫌であった。
そもそもがたいして美人でないパーキンソンと並ばせてみれば、その差ははっきりしていた。
ザビニの発言から、彼が彼女を誘う事はわかっていたから、早めに誘っておいた。
まあ、誘いはあちらの方が早かったらしいが、獲得したのは僕だ。



「決闘クラブでひと泡ふかせてやれ」



そんな言葉が聞こえて僕は足を止めた。
見れば中にはでベンチに座って話すグリフィンドールの三人組がいた。
僕はそっと彼らの後ろに回り込んだ。



「言われなくても、するわよ」

「でも対戦する相手はスネイプが決めるからね…」

「どうにか、ハーマイオニーとミョウジを戦わせたいよ」



どうやら彼らはミョウジの悪戯を根に持っているようだった。
僕は三人が僕に気づいてないとわかり笑みが漏れた。
三人が一斉に振り返る。



「マ、マルフォイ!」

「僕らの会話を盗み聞いてたな!」

「ここで大声で話している君たちが悪い」



僕の言葉に三人とも不満げに口を曲げた。
脳味噌の足りない連中だ。
グレンジャーのばりばりの髪を見て、やはりミョウジを誘ってよかったと思った。



「安心しろ。決闘クラブでひと泡ふかせられるのはお前たちだからな」



僕が笑えば、ウィーズリーが勢いよく立ちあがった。
杖がこちらに向けられる。
負けじと僕も杖を構えた。
一瞬にして、ぴりりと緊張が走った。
しかし、そんなウィーズリーをポッターが制した。



「彼に構う必要はないよ」

「ほう、ポッター。怖気づいたか?」

「行こう、二人とも」



ポッターは僕の問いに答えずに歩き出した。
歩きつつウィーズリーは何度か悔しそうに振り返ってきた。
これで、僕の後ろに三人いたら、一瞬で倒してやったさ。
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