「ドラコやっと来た!あ、ナマエも」



大広間に入れば真っ先にパンジーが話しかけてきた。
彼女は私のルームメイトであり、友達だ。
私はついでか、と心の中で呟く。
まあ、存在を認識されているのか危ういクラッブやゴイルよりかはましかな。
彼女に微笑んで私も席についた。



「ドラコ、パンを取ってあげるわ」

「ああ」



パンジーはマルフォイにぞっこんだ。
彼女が彼を好きなのは周知の事実で、みんなが気づいている。(彼女のあからさまな態度を見れば誰だってわかる。)
私とパンジーはライバルになるはずなのに、彼女は私をそうとは見てない。
いつもマルフォイと一緒にいるクラッブやゴイルと同じくくりとして認識されてるのだろう。
少し悔しい気もするが、それでも私はパンジーよりもずっとマルフォイのそばにいる時間が長いから、それで満足だと思っている。



「ナマエ、ジャムを取ってくれる?」

「いいよ」



だからこうして友達でいられるのだ。
もし、彼女に私がマルフォイのことを好きとばれたら、きっと口をきいてくれなくなる。
そんなことになったら、絶対に悲しいに決まってる。
こんなパンジーだけど、私の大切な友達なんだから。



「おはようナマエ、今日もきれいだね」

「もう、ザビニは何を言ってるの」

「最近めっきりきれいになった。前はまあ、可愛いかな程度だったんだけど、本当最近きれいになったよ」



さりげなく酷いことを言いながらザビニが私の隣に座った。
ザビニは美人にうるさいから、きれいと褒めてくれるのはデタラメではない、はずだ。
私は少し嬉しかった。



「何にやついてるんだ、ミョウジ。お世辞に決まってるだろう」

「噛みつくなよ、マルフォイ。やきもちか?」

「ふん。冗談はよせ」



マルフォイは鼻で軽く笑ってからパンを口に入れた。
その隣でパンジーがにこにこしながら、彼の顔を凝視している。
そんなに見られて、彼は恥ずかしくないのだろうか。
私は彼らを気にしつつもザビニの次の言葉を待っていた。



「お世辞じゃない、本当だよ」

「ありがとう…」

「マルフォイはああ言ってるけど、きっと俺と同じ意見さ」

「え?」

「ああ見えて君のこと大事には思ってるだろうし」


こそこそとザビニが言った。
さっき指摘されたのに、私は今にやついてるかもしれない。
マルフォイが私を大事に思ってくれてる。
胸が温かくなった。
その言葉の響きだけで今日一日中、いや、明日も明後日も幸せな気分でいられる気がした。



「それで、本題なんだけど」

「本題?」

「ダンスパーティで俺と踊ってくれない?」



すっかり忘れてた。
今年もダンスパーティが開催されるんだった。
私は唸った。
どうせ今年もマルフォイはパンジーと踊るんだろう。
でも、少しくらい期待してもいいだろうか。
マルフォイが私を誘ってくれることを。
期待するだけなら、誰にも迷惑はかけないし。



「うーん」

「だめかい?」

「少し考えさせて」

「考えてくれるのか、ありがとう。いい返事を待ってるよ」



そう言ってザビニは笑顔のままスープをすすった。
私を誘うなんて、ザビニは物好きだ。
そんな事を考えながら私もスープをすすると、ふとグリフィンドールのテーブルにいるハーマイオニー・グレンジャーと目が合った。
さっきはあんな酷いことを言ったけど、本当はあんな髪に憧れている。
(彼女みたいにバサバサなのは嫌だけど)けっこうあの色には憧れている。
もったいない。
それにあの子、顔だって可愛い。



そんな私の考えとはよそに、彼女はツンとしてそっぽを向いてしまった。
何を考えてるんだろう、私。
私は気高きスリザリン生なのに。
考え直そうと私は目の前のスープに視線を落とした。
その水面に自分のシルエットが映っている。



ねえ、ドラコ。
そんな甘ったるいパンジーの声が聞こえてきて、私は顔を歪めた。
私はパンジーにライバルと認識されないほどなんだ。
クラッブとゴイルと同等なんて、失礼だけど、本当は不満で仕方ないのだ。
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