「おはよう、ハーマイオニー」
振り向けばそこにはハリーとロンが眠たそうな目を擦りながら立っていた。
おはよう、と返す。
入学してから数年たつとだけあって、彼らの身長はかなり伸びた。
そんなことを考えつつ二人を見ているとロンが大きな欠伸をした。
喉の奥まで見えてしまって、少し顔をしかめたが彼は何も気づいていないようだった。
「ああ眠い」
「寝てないの?」
「フレッドとジョージに変なの食べさせられて…一晩中鳴きっ通しだったんだ」
「何が」
「僕がさ!ずっとニワトリみたいにコケーって」
「僕はロンがうるさくて眠れなかった」
目の下にクマを作った二人を見てため息をついた。
まったく、あの双子もよくやるわ。
でもその「変なの」を食べたロンもロンだ。
どうせ食い意地を張ったに違いないのだから。
私は呆れながら歩き出した。
「もう、二人ともしっかりし」
「邪魔だ、マグル」
私が言い終わる前に嫌な声が耳に入ってきて顔をしかめた。
見ずともその声の主は誰だかわかっていた。
スリザリンのドラコ・マルフォイだ。
ロンの喉の奥が見えるよりもずっと気分が悪くなる瞬間だ。
足を肩幅に開いて腕組する彼の姿は、もう何千回と見ていると言っても過言ではない。
「朝から君ら三人を見るなんて、僕はなんてアンラッキーなんだ」
その言葉に彼の取り巻きが笑う。
ビンセント・クラッブ、グレゴリー・ゴイル、そしてナマエ・ミョウジ。
この四人は必ずと言っていいほど、いつも一緒にいる。
彼らもまた、足を肩幅に開いて腕組をしている。
いや、ミョウジは片足に重心をかけて、いかにも偉そうな感じでいる。
「僕らだって、お前らを朝から見てアンラッキーだ!」
「そんなことより、その埃の積もった服を洗ったらどうだ。汚くて見ていられないぞ、ウィーズリー」
マルフォイは嫌みったらしく言って笑った。
気持ち悪い笑い方だ。
ロンが何を着ようとあなたには関係ないわ、と言おうとしたその時、彼の後ろにいるミョウジと目があった。
彼女も憎たらしい笑みを作って私の顔を覗き込むようにする。
「グレンジャー、あなたも髪を洗ったら?不潔でギシギシしてる」
「まるでホウキだな」
私は顔が熱くなるのを感じた。
視界の端に自分の髪がチラチラと入り込む。
ミョウジと、彼女の発言の後に付け加えたゴイルはマルフォイのような嫌らしい笑みを浮かべている。
何も言い返すこともできずに押し黙ってしまい、またそれが酷く悔しかった。
「マグルや赤毛と付き合ってる暇はないんだ。お前ら、行くぞ」
マルフォイが踵を返して歩き出す。
ゴイルとクラッブがそれに続く。
ロンが何か言おうとしていたが、私はこれ以上彼らといるのが耐えきれずそれを制した。
ミョウジは長く艶やかな髪を見せつけるように、その髪を手でかきあげ、靡かせながら去っていった。
「その…ハーマイオニー、僕らは君の髪が好きだよ」
「お世辞はいいわ」
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