「ナマエはどこの寮に入るかな」
「ナマエは優しい子だから、ハッフルパフかもしれないわね」
「いや僕は、僕と同じグリフィンドールに入ってほしいな」
「そんなこと言ったら私だってレイブンクローに入ってほしいわよ」
私はそんな両親の会話を思い出していた。
学生時代、パパはグリフィンドール、ママはレイブンクローだった。
両親の笑顔を思い出して私は心が温かくなるのを感じつつ、一方で寂しさも感じ始めていた。
そこで自分の名前を呼ばれ、素っ頓狂な声で返事をしてしまった。
みんながくすくすと笑い、私は赤面した。
組み分け帽子のもとへ行く。
歩きながら、足が震えるのを感じた。
緊張する。
私をパパはグリフィンドール、ママはレイブンクローに入れたがっている。
わかっているが、私の心はどちらとも違うところに傾いていて、どうにも振り払うことができない。
「おや、君はスリザリンを希望しているようだねえ…素質からいってグリフィンドールかハッフルパフだと思うのだが…」
帽子の言葉に少しざわめきが起こった。
私は冷や汗が出るのを感じた。
みんなの視線が痛い。
なぜ?といった声が人々の中から聞こえて、その答えが何であるか考えた。
言葉にせずとも、脳裏には一人の姿が浮かんでいた。
「スリザリン!」
長い沈黙の末に帽子が叫んだ。
私は後悔するような、でも安心したような、変な気持ちのままでスリザリンのテーブルへ向かった。
また、ぶわっと汗が噴き出した。
血が体をぐるんぐるんと回るのを感じながら、ふらふらと進む。
マルフォイが手招きしているのが見えて、私はどきどきしながら彼のもとへ向かった。
「汽車から降りた後どうしてたんだ、気づいたらいなくなってて驚いた」
「ごめん…私も三人がいなくなっててびっくりした」
「スリザリンおめでとう」
「マルフォイも」
マルフォイはにやりと笑った。
これが彼の笑い方らしい。
すると彼がふと不機嫌そうな顔をした。
「君、素質から言えばグリフィンドールかハッフルパフだって」
「うん、まあ、そう言われたね…」
「僕はグリフィンドールが大嫌いなんだ」
そこ言葉に私の胸が震えた。
マルフォイは、グリフィンドールが嫌い。
私は、グリフィンドールの素質を持っている。
「まあ、君がスリザリンに入った今となっては関係ないか」
マルフォイはそう言ってたけど、私の胸はかすかに痛んでいた。
ずきずきと、小さく。
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