「ずいぶんと上手くなったよ」



ハリーに言われて私は嬉しくなって大きく頷いた。
ダンスがびっくりするほど下手だった(指摘されるまで気づかなかったが)私にハリーが練習相手になってくれると優しい言葉をかけてくれて、私はグリフィンドールの談話室で彼と踊っていた。
ノットを相手に練習することは不可能ではなかったのだけれど、彼にはかなりお世話になっているから、ここまでお世話にはなれないと自分でどうにかしようと思っていたのだ。
そこにハリーが救いの手を差し伸べてくれたので本当に助かった。
彼にダンスのパートナーは決まった?と聞いたが、彼は苦笑しながら首を横に振った。



「君がノットと踊る予定がなかったら、きっと君を誘っていたと思うよ」

「それは光栄だわ。でもハーマイオニーじゃなくって?」

「いや、彼女はロンと踊るんだ」

「なるほどねえ…」



ロンを本でばしばし叩いているハーマイオニーを見ながら私は呟いた。
お互い素直になれないだけで、本当はお互いのことを大切に思っているんだろうなあと思った。
ふとハーマイオニーがこちらを見た。
慌てて視線を逸らそうと思ったがその必要はないようだった。
すぐに声をかけられる。



「ナマエ、あなたドレスはどうするの?」

「ドレス?」

「パーティで着るでしょう。お母さまが送ってくださるの?」

「ああ…どうするんだろうなあ」

「もう、しっかり考えなきゃだめよ」

「ハーマイオニーはどんなドレスにするの?」

「私は、パープルかな」

「そっか…」



頭の中で家にあるドレスを思い浮かべていた。
たしか、去年ホームパーティで着たブルーのドレスがあったはずだ。
あと、ママの黒のドレス。
もう私でも着れると思うから、それも候補に。
別にドレスを新調してもらう気はない。



「ハリーはジニーと踊ったらいいのに」

「ジニーと?」

「すごくいい組み合わせだと思うんだけど、どう?」

「そうね、私もそう思うわ」



ハーマイオニーが私の言葉に二度頷いた。
一方、ロンはなんだか複雑そうな顔をしていたが、特に何も言わなかった。
私が軽く脇腹を小突くと、なんだよと顔をしかめたが、何が言いたかったかはわかるだろう。
私やハーマイオニーの言葉を聞いたハリーは笑顔になりながら、誘ってみるよ、断られないといいけど、と言った。






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「ブルーと黒、どっちがいいかな」



そんな発言が聞こえてきて僕は思わず咳きこんだ。
それは間違いなくミョウジの声で、その話をふられたのはノットに違いない。
すぐにそれがダンスパーティに着るドレスの話であると勘付いた僕は静かに彼らの会話に耳を傾けた。



「それってドレスの話か」

「うん」

「別にどっちだっていい」

「はいはい、言うと思いました」

「ドラコ!今日もいい天気だと思」

「しっ!」



彼らの会話を聞いていたところでパーキンソンが現れ、甲高い声で話しかけてきたので思わずそれを制した。
彼女は何事かと驚いて、目をしばしばさせながら僕を見たが、彼女の相手をするのは後回しだ。
見れば呆れたような顔のミョウジが涼しい顔で本を読んでいるノットに向いていた。
話を聞いていないあの男にどうしてそんなに無理して話しかけるんだ。
そう心の中で呟いたが、それは当たり前だと気づく。
ノットはミョウジのパートナーだからだ。
パーキンソンが僕にしつこくドレスの色のことを話したのと同じだった。



「本当にどっちでもいいって思うの?」

「…ブルーがいいんじゃないか」



なんでだ、黒がいいに決まってる!
黒の方がセクシーだし、それにミョウジに似合うはずだ、間違いない!
それなのにブルーを選ぶとはノットのやつ、ミョウジのことを全くわかっていないか、本当に彼女に興味がないのか!
とうとう心の中の声は叫びに変わった。
色の話が聞こえた時点で頭に黒のドレスを着たミョウジの姿が思い浮かべられていたので尚更だ。
しかしすぐさま首を横に振った。
ミョウジが何色のドレスを着たって関係ない、僕のパートナーはパーキンソンだ。



「パーキンソン」

「なに?」

「ドレスなんだけど、もう色は決めたかい」

「ううん、まだだけど…」

「黒にしないか」

「黒?…考えたことなかったけど、ドラコがいいって言うならそうするわ」



僕のパートナーは綺麗でなくては。
パーキンソンに黒のドレスを勧めながら、僕は早くも彼女には似合わないかもしれないと後悔しはじめていた。
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