もう僕らはこんな状況に慣れつつあった。
マルフォイは常にカリカリしていて、僕らが何かすると、すぐに噛みつくようにどやしてくる。
クラッブはそれに対して首をすくめて反省したような顔をして、マルフォイがよそを向いた隙にため息をつく。
まあ、僕も同じような感じだ。
そして僕らは未だに四人で行動している。
といってもミョウジがいるわけなく、彼女の代わりに一緒にいるようになったのはパーキンソンだ。
終始マルフォイに甘い声で話しかけているが、軽くあしらわれ、それに対するフラストレーションはクラッブと僕に向かう。
まったく、いい迷惑だ。



「ドラコ、パーティーのドレスなんだけど、ピンクとホワイトどっちがいい?」

「どちらでも」

「えー、ドラコに決めてほしいの」



そして今もパーキンソンは懲りずにマルフォイの隣に擦り寄りながら甘い声を出している。
もうその声を気持ち悪くも感じ始めているのだが。
相変わらずのマルフォイの態度に屈しない彼女の精神がいかにしぶといか理解できる。
マルフォイはブロンドの髪を撫でながら読んでもいない本を開いて、そのページから目を離さずに彼女の言葉に一応答えている。



「ゴイル、お前が決めろ」

「僕が?」

「嫌よ、ゴイルが決めたドレスなんか着たくないわ」



心底嫌そうな顔をするパーキンソン。
こっちから願い下げだと言いたくなるが、言ったら後が面倒だから黙っておくことにしよう。
こうしていると、本当に前までの日々が恋しい。
パーキンソンのいる位置がミョウジだった頃はもっと楽しかった。
彼女が他の寮の生徒に仕掛ける悪さは最高だったし、何より一緒にいて楽だった。
それが、今やこんな騒音のような女にとって代わられてしまったのが悲しい。
ミョウジを見かけるとき、だいたい彼女はノットといる。
もしそうでなければポッターをはじめとする他の寮の生徒といるのだが、最初は目を疑った。
あれだけ嫌っていた彼らと談笑する彼女の姿は本当に異様だった。



「じゃあピンクにしたらいい」

「うーん、でもホワイトも可愛いのよね」

「・・・」



いよいよマルフォイが返事をしなくなった。
僕らには怒鳴るくせに彼女には怒鳴らないのは、彼がジェントルマンだからだろうか(少なくとも女子には)。
それとも好意を寄せられることには嫌な気がしていないのか。
教室に入ってきたミョウジとノットは相変わらず仲良さそうに並んでいる。
あの二人は交際しているのではないかという噂がたつ程、最近は一緒にいるのだ。
しかし一方でマルフォイとはミョウジの仲は言うまでもないが、ノットとの仲も良くないようだ。



思うに、マルフォイはミョウジにあんな態度をとったことを後悔している。
最近こんなに機嫌が悪いのは、もちろんパーキンソンがやかましいというのもあるが、ミョウジが離れてしまったことにもあるんじゃないかと。
いつも使わない頭で考えることだから確かじゃないが、なんとなくそう思う。
確かにロングボトムにとどめを刺さなかったミョウジは無様だったけど、僕らの中から追い出すほどのことではなかった。
マルフォイが何をそんなに気に入らなかったのかも、実を言うとわからない。



「ノットもよくあんな女を相手にするわね。あいつ、ポッターたちと仲がいいのに、どうかしてるわ」



パーキンソンの言葉で僕ら三人が二人の方へ視線を向ければ、見慣れた光景がそこにあった。
何か一生懸命に話しているミョウジの横で、いつも仏頂面のノットが薄く微笑んでいる。
どんな話をしているのだろう。
しばらく彼女の話はおろか、声すらも聞いていない。
ちらと隣を盗み見ると、心なしかクラッブも悲しそうな顔をしていた。
歯の軋む音がした。



「ノットといない時はいつもポッターたちといるのか」

「ええ、いつもよ。本当にいつも!」



パーキンソンは大袈裟にそう言った。
そしてどんどんマルフォイの顔が歪むのがわかる。
どうにかならないものか。
僕は頭が痛くなるのを感じながら、どうにかミョウジを連れ戻せないかと考え始めていた。
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