「ジキ、ジキ」
「んー?なあにナナシ?」
「も、やめて」
「やだよ」
「やめろって、ば!」



わたしは近くにあった雑誌で喰の顔面をはたく。丸メガネがぽーんと飛んで行った。あ、壊れたかな、どうしよ。でもずっと腰やら太ももを撫でられてたんだから少しくらい逆襲したっていいよね。うん絶対いいはず。



「痛いよナナシ…」
「痛くしたんだもの」
「そんなナナシも好きだけどね!」
「喰はなんでそんな変態チックなの」
「こんな風になるのはナナシにだけだよ」
「っ、」



腰に腕を回されて引き寄せられたかと思えば、今度はべろりと首筋を舐められた。喰は触ったり舐めたりするのが好きだ。本人いわく「好きなものほどゆっくり味わいたい」らしい。



「手の動き、なんかやらしー」
「やらしくしてんの」
「喰発情中?」
「さあ?」
「あ、首に跡つけるのはやめて」
「もう付けちゃった」
「うそ」
「キレーな赤だよ?」
「……またみんなにからかわれる…!」
「みんなって誰?」
「朔さんとか朔さんとか朔さんとか…!!」
「見せつけちゃえ」
「喰のばかあああ」
「痛っ」
「こんなことする喰なんかキライだっ」
「ぼくはナナシのこと好きだよ?」
「……っ!」
「ほら照れない照れない」



そしてなだめるかのように抱き締められる。なにもかも彼のペースであることに反抗するかのように、わたしは彼の首筋にがぶりと噛みついた。