「もう、自分の部屋戻ってよ…」
「いいじゃん、ボクとナナシの仲だし?」



こんな会話をベッドの中で交わす私たち。はっきり言って寝させてほしい。喰が私の部屋に来た。私はもちろん、他の皆も寝静まっているであろう頃に。なぜ、目が覚めたかというと、ベッドのスプリングが音を立て、私の身体が大きく沈んだから。うっすらと目を開けるとそこには私のベッドに入ろうとしている喰がいた。



「ていうかなんでここにいるの」
「ナナシのこと考えてたら眠れなくて?」
「………なにそれ…」
「あ、背中向けないの」



首の下に腕を差し込まれて、半ば強制的に喰の方を向かされる。いつもしている眼鏡は今はしておらず、金色の瞳は暗闇の中でもその輝きを失ってはいなかった。



「腕枕してあげる」
「……ん」
「あ、やっぱりハグしてもいい?」



私が何か反応を示す前に身体を密着させられる。私の頭はぎゅっと彼の胸に押し付けられ、規則正しい心臓の音も聞くことができた。



「ボク、人肌が恋しくなっちゃったのかも」
「?」
「ナナシに触れたくて仕方なかった」
「そう、」
「ナナシに触れてると何でかすごく安心するんだよね」
「………」
「ナナシ、眠気限界?」
「うん、」



喰の体温でさらに眠気が加速する。肌に触れて安心するという点では私も彼と同じなのかもしれない。



「…ねむい」
「うん、一緒に寝よう?」
「…何もしないでよ……」
「それ目的で来たんじゃないから安心して」
「よかった」



喰の掌が一定の間隔で優しく私の後頭部を撫でる。私はおやすみ、と小さくつぶやき、すぐに意識を手放した。



「おやすみナナシ」