「なー、どうしてもダメか?」
「だめ、絶対にだめ」
「いいだろ少しくらいさあ、」



裸の男と女がこの状況で口論することになった原因は全て男の方にある。この状況って言うのは絶賛合体中ってことね。



「ナナシの身体、思いっきり噛んでみたいんだけど」



朔さんが動きを止めて、突然そう言ったのだ。私は頭がぼーっとして最初は言ってることが理解できなかったが、快感が与えられなくなったことで次第に頭が正常に回りだす。そしていつもより少し時間をかけて彼の言ったことを理解した。



「…………やだ」
「なんでー」
「……痛いもん」
「痛くしないから」



いやいや、さっき思いっきり噛んでみたいって言ってなかったっけ?朦朧としてたとはいえ、ちゃんと聞いてたんだから。



「初めてヤったときに比べたら痛くないって!」
「うわ、朔さんサイテー」
「なー、噛ませて?」
「だめだってば」



私は普段通りの行為の続きを促すかのように朔さんの首に腕を回す。だけど彼はどうしても私の肌に歯を立てたいようだった。私の催促を無視し、挙げ句、私のナカから抜いてしまった。私の中にはもどかしさが残る。



「なんで抜いちゃうの」
「んー?ナナシがおれの言うこと聞いてくれないから?」
「だって痛いのはヤだもん」
「やらせてくんなきゃ、続きしてやんねーぞ?」
「……朔さんてそんな人だったっけ」
「ナナシが頑固だから仕方ない」
「頑固なのは朔さんだよ」
「で、どうする?」



ニヤ、と朔さんが笑う。いつもの笑い方とは違う、何となくいやらしい感じ。かっこいいけど。行為を中断されてしまったせいで私の身体の熱は行き場を失っている。このまま終わるのは正直辛い。でも噛まれるのは痛いし。私は悶々と考える。



「ったく、ナナシは優柔不断だな」
「っひ、……!?」



頭の中でいろいろと考えを巡らせていたら痺れを切らした朔さんにかぷりと脇腹を噛まれ、無意識に身体が大きく揺れる。



「痛かったか?」
「…痛くない」
「ははっ、どんだけおれが強く噛むと思ってたんだよ!」
「だって朔さんが思いっきりとか言うから…」
「そんなことしたらナナシに嫌われちまう」



だから痛くしないって言っただろ?そう言って頭を優しく撫でられる。するとまた噛まれ、身体がビク、と反応する。



「お、ここ弱いみたいだな」
「う、も、そこ噛まないでっ」
「くすぐったい?」
「変な感じ…っ」



今度はそこを舌で舐められ、きつく吸われる。



「跡、つけといた」
「へ…?」
「ナナシの悦ぶトコをまた見つけたからなあ」
「よ、悦ぶって…」
「よし、それじゃあ、」



朔さんは身体を動かし、自身を私の中に再び埋めた。突然のことで私の身体が一瞬強張る。



「う、あ」
「そんな締めんなって」
「っ、いきなりで、びっくりした…」
「あ、ごめんな?」



朔さんが私の鼻頭に口付けを落とす。



「じゃっ、おれのお願い聞いてくれたし、ナナシのために頑張っちゃおうかなー」
「頑張らなくても、いいっ、てば…!」
「も、素直じゃねーなあ…!」



何だかんだで、次のセックスから私は毎回彼に歯形を付けられることになったのだった。