「ナナシー」
「なあに」
「暇、なんだけど」
「无ちゃんたちと遊んできたら??」
「………ナナシーーーーーー!!」
「わ、なに」



違うのおれはナナシにかまってほしいの!そう言いたいのだけれど、言おうとするだけで喉元が締め付けられる感覚に襲われる。だから言わない代わりに後ろからのしかかるように抱き締めて思い切り体重をかけてやった。



「重いよ與儀」
「…重くしてんの」
「なんか……太った?」
「えっ、うそ!?」
「だって重いから」
「重くしてるんだってば」



ナナシがさっきからずっと適当な受け答えばかりしている理由は彼女が雑誌を読んでいるから。普通の雑誌だったらぜんぜん気にしないのだが、今読んでいるのはなぜか男性ファッション誌。この前一緒に街に行った時に購入したものだ。女の子でも男性ファッション誌に興味があるのかな、と素朴な疑問を持つ反面、なんだかとっても気に入らない。



「…こんなのどこがおもしろいのー」
「あ、勝手にページめくらないで」
「男がかっこつけてるだけでしょ?」
「でもかっこいいじゃん」



さらりとそう言ってのけるナナシ。むかー。ここにこんなカッコいいキラメキ王子がいるってのに!この子の目は一体どうなってるの!考えれば考えるほど無性に悲しくなってきてナナシを抱きしめる腕に力を込めた。



「ナナシにはおれがいるじゃんかー」
「あ、拗ねた?」
「拗ねてないっ」
「ならいいけど」
「拗ねてない、けど、妬いた」



ぽつりとそうつぶやくと頬に熱が溜まっていくのを感じた。ナナシには見られていないけれど、恥ずかしい。その恥ずかしさを消すかのようにナナシの背中に頭をぐりぐりと押し付けた。すると、ナナシは身体を捩ってこちらに向き直り、ごめんね、と言っておれの頭に手を置いた。



「…別にいいけど、」
「そんな顔には見えないけど?」
「…なんでそんな雑誌読むの」
「目の保養」
「っ、おれがいるじゃんかああああ」
「あー、はいはいごめんね與儀」
「はいはい、ってなんなのさー!」



おれはいつでもナナシのいちばんでありたいのにっ