「ねえねえ敦」
「んー?」
「聞いてますかー」
「聞いてる聞いてるーーー」
「うそだ今食べてるお菓子と今見てるテレビのことしか考えてないでしょ」
「そんなことないしー」



そんな彼の態度に人と会話するときくらいこっちを向きなさい。と文句を言いたくなる。けど、今はそれが本題ではないから、ぐっと飲み込んで胃に落とす。



「あのね、私誘われたんだけど」
「はー?何に」
「合コン」
「…高校生で合コンとかあんの」
「よくわかんないけど友達に来るように頼まれて」
「それって人数合わせ?」
「そうだと思う」
「ふーん…」
「ふーん、て、…それだけ?」



彼がようやくこちらを見た。絶対に私がそういうのに参加するの嫌がると思っていたのに。むしろ何で?っていう顔をされると拍子抜けしちゃうんだけど。



「行ってもいいの?」
「いーんじゃない?別に」
「心配とかはしてくれないわけですか」
「んー、心配っていったら心配。だってナナシちんていっつもフラフラしてんじゃん」
「な、してないし」
「でもまあ、大丈夫かな」
「なんで」
「だってちゃんと俺んとこ戻ってくるデショ?」
「う、ん」
「ナナシちんは俺のこと大好きだもんねー?」



一気に距離を詰められ、ぎゅう、と抱き締められる。何もかもを見透かされたような態度だけれどもその中にある信頼を私は感じ取ることが出来た。



「あ、でも終わったら連絡してね?迎えに行ってあげるから」
「え、うそ、来てくれんの」
「うん、ヒマだったら」
「敦、バスケしてる時以外はヒマそうじゃん」
「お菓子食べるのに忙しいのー」
「…待ってるからね」
「はいはい」