「なっ、なにをやっているのだよナナシ…!」
「え?体操だよ、おっぱいの」



トイレから戻ってきたらナナシが自分の胸に両手をあてて揉んでいたから驚いた。



「今しなくてもいいだろう!」
「だって真太郎トイレ行っちゃったからさあー」



ひまだったからやってたの、と悪びれる風もなく言う。ひまだったらおとなくしく待っていればいいだろう。なぜその行為に思い至ったんだ。



「いつもやってるのかそれ」
「うん、胸おっきくなってほしいもん」
「そうか」
「何気にわたしの胸小さいって思ってるでしょ」
「そんなことないのだよ」



青峰じゃあるまいし。というかそんなに小さくはない、気がする。だからといって大きくもないけれど。でも自分にはちょうどいいと思っている。



「で、効果はあるのかそれ?」
「わかんない」
「ないのか」
「分かんないって言ってるでしょー!」
「おれからしたら効果がないように見えるのだよ」
「ひどいっ!じゃー真太郎も手伝ってよ!」
「手伝うって何をだ」
「胸おっきくする手伝い!」



何をどう手伝えばいいのだ。呆気にとられていたらふいにナナシに手を掴まれる。



「ちょ、ナナシ、なにを」
「胸揉んでよ?」
「何だそのセリフは。変態か」
「ちがうわい!」
「まあ、触ってやらないこともないのだよ」
「…変態はどっちだ」
「何か言ったか?」
「イエ」



ナナシの胸を下から掬うように触れる。…やはり大きさは変わっていない。男にはないその柔らかさにはいつも気を惹かれる。



「やわらかいな」
「この胸でいつも真太郎を満足させてあげてるのよー」
「気持ち悪いことを言うな」
「む、だって本当のことじゃんか」
「ナナシはただ喘いでいるだけなのだよ」
「あえっ、……そんな言葉どこで覚えてきたの!」
「もちろんお前からだが?」
「そんな喘いでないもんね!」
「そういう奴ほど実際そうなのだよ」