「夕!」
「ナナシ!遅いぞー!」
「ごめんごめん!」



校門で待つ彼に駆け足で走りより、どちらからともなく手をつなぐ。



「なんで今日は来んの遅かったんだ??」
「図書館で知らないうちに寝てた」
「ナナシらしいなっ」
「ちょ、それどーいうこと!?」



夕が繋いだ方の腕をぶんぶんと振り回す。そんな姿にも胸がきゅんとしてしまうわたしはもう末期でしょうか。



「今日ナナシんち行っていいか!?」
「うんいいよー」
「やった!いちゃいちゃできるっ」
「なんかすり寄ってくる夕って子犬みたいでかわいいよね」
「はあ!?おれがチビだからそんなこというのかお前ー!」
「ごめんごめん冗談だって………ホントだけど、」
「聞こえてんぞっ」



けっ、と夕がそっぽをむく。コートの仲じゃあんなに頼もしいのにこのギャップは何なんだろうほんと。わたしはつないでいた手をほどいて彼の頭を撫でる。



「そんな拗ねないでよー」
「拗ねてねーし」
「あ、けっこう髪伸びてきたね」
「最近切ってないからな。ていうか手、」
「ん?」
「手、離すなよ」



眉間に皺を寄せながら私に手を差し伸べる夕。その姿には夕焼けがとても映えていた。



「ごめんごめん」
「別に気にしてないっつーの!」
「おわびに今度髪切ってあげるよ」
「えっ、マジで!?」
「うん、失敗したらごめんだけど」
「じゃあ今度の休みに切ってくれ!」
「いいよー」