「む、痒い」
「どうした?」
「蚊に刺された」
「どこを?」
「ここ、」



そう言ってナナシは人差し指をおれの目の前に持ってきた。刺された箇所は中指側の第二間接の少し下。こんなとこから血を吸う蚊って相当モノ好きじゃね?



「なんてとこ刺されてんの」
「そんなんわたしが聞きたいよ」
「ここはかきにくい場所だな」
「でしょ?すっごいむずむずする」



ナナシは本当に痒いらしく、指をすり合わせている。



「そーいえばさ、蚊に刺されたときは爪でバツを作るといいんじゃなかったっけ?」
「え、そうなの?知らなかった」
「こーいう風にさ、」



試しにナナシの腕にバツ印を作ってみる。そこは蚊に刺されてはいなかったけど。おれが付けた爪の後はナナシの白い肌にとてもよく映えていた。



「ここ刺されてないのに」
「やりかたを教えてあげたんだっつの」
「でも指には難しいよねそれ」
「そうだな、あ、そうだ」
「ん?」
「ナナシ指貸して」
「え、何する気」



おれはナナシの指を口にくわえる。でも今日は舐めるんじゃなくて噛むのが目的。まあ、ちょっと舐めるけど。



「大地何して、」
「こーやって痒いとこ噛んだらおさまると思って」
「なるほど!じゃあもっと噛んでー」
「はいはい」



刺されて赤くなったところに何度も歯を立てる。心なしかナナシの顔が赤くなっている気がする。



「やば、なんかこれ気持ちよくなってきた」
「もう痒くないか?」
「うん、ありがと」
「また痒くなったら言えよな」
「はーい」
「さて、」



おれはナナシをその場で押し倒す。



「え、大地?なに、どしたの」
「もっと気持ちいことしようか?」