「ナナシっ」
「えっ、なに」
「脱いでっ!」
「は、えっ、あ、ちょっ!」



及川家でまったりのんびりしてたらいきなり大声でわけのわからないことを言われ、制服のシャツのボタンをあっという間にはずされてしまった。うわ、手馴れてるー…そして、徹自身もシャツを脱いでいるではないか。ますますわけがわからない。



「あの、徹?」
「え、なに?」
「…これは一体どーいう状況なの」
「裸体鑑賞大会!」
「なにその生々しい大会」



何を思いついたかと思えば…と私は溜息を吐く。徹に両手首を掴まれているせいで、彼に近寄ることはできても遠ざかることはできない。



「制服も脱ごうねー」
「ええ…」
「そんなイヤな顔しないの!」



すぐに私の上半身は下着を身に着けただけになり、いきなり外気に晒されたことで小さく身震いをする。徹は寒くないのだろうか。私は気付かないうちにまじまじと彼の身体を見つめていた。薄い身体のくせして、筋肉はしっかりと付いている。



「ナナシのえっちー!」
「そっ、それは徹じゃん!」



女の子みたいに腕を身体に巻きつけるな!



「触ってみたい??」
「触っ…!?」



そんなこと恥ずかしくてできない、と思ったが、はたと気づく。私って触られてばっかで徹の裸に触れるのってほとんどないんじゃないか。いや、皆無?そう思うと自然と興味が湧いてきた。



「触っていいの?」
「うん、ナナシなら大歓迎」



私はひた、と彼のお腹に手をやる。ちゃんと腹筋あるし、私みたいにぽよぽよしてない。やっぱり男の子だな。私は夢中になって彼の身体をぺたぺたと触った。



「なんかくすぐったいよナナシ」
「あ、ごめん、私触りすぎた?」
「なんか感じちゃう」
「え、」
「手、止めないで」



もっと触ってもいいよ?と私の好きなかっこいい笑顔を見せて言う彼。でもどうしよう徹がMに目覚め始めてるんじゃないの、これ。というかそんなこと言われたら逆に触りづらくなる。



「乳首も触ってー」
「徹今日ヘンだよ」
「たまにはこーいうのもいいじゃんかあ」



むう、と頬を膨らませる徹。男のくせしてこんな姿も様になってしまうのが少し憎たらしい。



「触るってどう触ればいいの」
「んー、舐めたり摘んだり?」
「………はず」
「ほらやってみて?」



とりあえず私は言われたとおりに摘んでみた。何度も繰り返してると起ちあがって若干硬くなってきた。男でもこうなるんだなあ、と少し感心。口を近づけてぺろ、と舐めれば徹の身体が小さく震えるのが分かった。



「ナナシ、どうしよ、ほんと感じてきちゃったんだけどおれ」
「ねえ、もうやめようよ?」
「え、ナナシいやだった?」
「私が徹にこんなことするのってなんか気持ち悪いよ」
「いつも通りのほうが好き?」
「うん」
「じゃあいつも通りにしよっか」



そしてどちらからともなく軽く唇を合わせる。



「もう裸体鑑賞大会なんて止めようね」
「えー」
「だって徹がMに目覚めそうだったもの」
「Mのおれは嫌い?」
「私がSになる自信がない」
「なるほどね!」