「む、意外と難しい」
「はは、慣れたらすぐにできるって」



さっきからナナシが何をしているかというとおれに跡を付けようとしています。胡坐をかいた膝の上に乗せて向き合い、おれがそれをナナシにやっていたら、興味を持ったらしい。私もやる!って言ってさっきからずっと挑戦している。そのせいで鎖骨辺りが先ほどからずっとくすぐったい。



「きっと筋肉が邪魔でできないんだな、うん」
「いやいやいやナナシが下手なだけだよ」
「なにお!」
「女の子でもできる子はできるみたいだぞ?」
「それ誰情報」
「……さあ?」
「はぐらかすなっ」
「いーから、もっかいやってみなー」
「ん、」



ナナシが再び鎖骨の辺りに口付ける。こんだけ長いことやられると次第にムラムラしてきて、自然と掌がナナシの腰を這い回る。それに気付いたナナシは腕を掴んで引き離す。触るなってことか。



「やっぱできない」
「なんでだろうな?」
「いつもどうやってる?」
「いつも?」
「うん」



どこをどうしたら良いのかなんて分からないし、そんなことを言葉で説明する自信がない。だから実演ということで、先ほど付けた跡のすぐ近くにもう一つ華を咲かせてやった。



「…こんな感じ?」
「ぜんぜんわかんない」
「おれだって説明のしようがないし」
「なんでそんな簡単に出来るの」
「ナナシ相手に何回もやってきたからなあ」
「……思いっきり噛めばそれっぽく見えるかな?」
「ヤメテ普通に痛いからそれマジでヤメテ」
「えい」
「いって…!!」



本気で噛んだんだけどこの子!なんかもう跡さえ残れば何でもいいらしい。