「あんたどんだけ欲求不満なのほんと」



私によって丸められた雑誌を自分の目の前で正座をしている男に向ける。ちなみにその雑誌っていうのは裸のおねーちゃんがたくさん出てくる俗にいうエロ本。たまたま訪れたジャンたちが寝ている男部屋にて彼のベッドの下から見つけました。どこでこんなもん見つけてきたんだか。



「お、男なんだから仕方ねーだろ?」
「だからって全員そうとは限らないでしょ」
「いや9割以上の男はそうだと思うが」
「屁理屈こねんな」
「すいません」



手にある雑誌で頭を軽くはたく。



「ジャン、アナタの性欲は異常すぎる」
「…そうか?」
「今度ハンジさんにでもみてもらいなよ」
「いや、それは遠慮する」
「ならもうこんなもの見ないの」



私は雑誌をポイッと部屋にあるゴミ箱に捨てる。そのときのジャンの残念そうな顔といったらない。さっきより強く頭をたたいてやろうかな、ほんと。



「……私じゃ物足りない?」
「さあな」
「私なんかよりも好きなだけ思う存分抱かせてくれる女性でも見つけたら?」
「いやだ。ヤるならナナシとがいい」
「でもエロ本見て一人でヤってんじゃん」
「それは、アレだ」



何回もヤったらお前に負担がかかるだろ、とそっぽを向きながらそう言う彼。私のことを気遣ってくれていたなんて少し感動。



「……ほんとに?」
「………ああ」
「…実際は?」
「………………ヤり足んねえから…」
「うわ、最低」



私は彼の目の前にしゃがみ込んで両頬を思いっきり引っ張ってやった。もちろん彼は痛がったがそんなこと気にしない。そのまま抓っていたら、彼も負けじと私の頬へ片手を伸ばし左頬をぐいん、と引っ張る。



「ちょ、ひっぱらないでよ」
「それはオレのセリフだ」
「ヤり足らないとか言うジャンが悪い」
「だって本当のことなんだから仕方ねえだろ」
「私に負担をかけたくないっていうのは?」
「それも本当だ」



パッと両手を離せば、ジャンの頬は真っ赤になっていた。わ、なんか可愛い。私に続いてジャンも私の頬から手を離す。そして自分の両頬をさすっていた。



「はー、いってぇ………」
「はは、ジャンの頬真っ赤だ」
「お前のせいだろうが」
「かわいそうにー」
「お前のせいだから、もう一度言うけど」



からかうつもりで頬を両手で撫でてやる。すると、突如彼の動きが止まった。それはもう完全に。



「………ジャン?」
「お、お前そんなんして、」
「え、なに、」
「オレを煽ってんのか……?」
「………」



無言でやらしいことしか考えていない脳に無言でチョップをかます。どんだけ脳内ピンク色なのこの男は。



「…ジャンがこんなにエロいなんて思ってなかったよ」
「お前が可愛すぎんのが悪い」
「じゃあもうあんな本必要ないよね」
「…ナナシが今まで以上にオレに付き合ってくれるなら」
「……考えとく」
「じゃあそれまではエロ本を」
「読んだらコロス」
「だよな」
「次見つけたらもう絶対にジャンとはヤらない」
「まじか」
「そんで104期生全員に言いふらしてやる」
「……もうエロ本読まねーからさ、」



ジャンの手が伸びてきて私の首筋に触れる。その瞳はさっきとは異なる何かを秘めていた。



「今からヤんね?」
「っ、この変態男がああああああ」



反省の色を見せないこの男に私は思いっきり頭突きをかましたのであった。