マスターとの楽しい日々! | ナノ
:: Traffic in human beings

「ねェ、シーザー」
「なんだ?」



ドフラミンゴさんが帰ってようやく静かになったところでシーザーに話しかける。



「シャボンディ諸島ってどこ??」
「ここからは少し距離があるな」
「そこ、行くの?」
「さァな……なんでそんなこと聞く?」
「行ってみたいから」
「なっ」



別に深い理由なんてないけど、シーザーに拾われて以来、ずっとここで過ごしてきて遠出をするということが全然なかった。だからたまには違う場所へ行ってみたくなったのだ。



「シーザーもヒューマンショップ?そこに行くんでしょ?」
「……行かん」
「え、なんで?」
「〜〜〜ッ、何でもだ!行かねェと言ったら行かねェんだオレは!」
「な、そんな怒らなくても」



久しぶりにこんな怒るシーザーを見た。少しだけ恐怖心が芽生える。そんな私に気が付いたのか、シーザーははっと我に返って、私を抱きしめる。



「、悪かった」
「ん、大丈夫」
「ナナシはシャボンディ諸島へ行きたいのか?」
「興味はあるけどシーザーが行きたくないならいいや」
「シュロロロ、いつからそんな遠慮をするようになったんだお前は」
「え、もとから控えめな女の子ですが?」
「オレはお前が行きたいのなら連れて行ってやる」
「え!ほんと!」



私が彼の腕の中で顔を輝かせるとスッと頭を撫でられる。だがその顔はどこかぎこちない。



「ナナシはここに来てからは外の世界を知らねェんだよなァ…」
「?うん」
「外の世界じゃいつどこで危険な目に合うかわかんねェぞ?」
「大丈夫だよ、シーザーがいるし?」
「シュロ……そ…そうだな!」



シーザーの顔がぽっと赤くなる。可愛いなあ。私は彼の細い身体をぎゅっと抱きしめ返した。



「あ、あのなナナシ?」
「なに?」
「ヒューマンショップのことだが…」
「でも行かないんでしょ?」
「あァ、まァ、それはそうなんだが、」
「…なんかシーザー気持ち悪い」
「なぬっ!?」
「言わなきゃいけないことがあるならはっきり言って」
「そ、そうだな」



シーザーは私の両肩を掴んでジッと私を見つめる。いつもと雰囲気が違う。



「ヒューマンショップは…人身売買の店だ」
「……………」
「……………」
「………そうなんだ…」
「………ナナシ?」
「あのね、これはシーザーに言ってなかったんだけど、」
「?」
「私も、前に一度…そーいうとこいたんだよね、」
「!?」



シーザーの表情が固まる。前に乗っていた船に乗ることになったのはそこの船長に気に入られて買われたから。最初は絶望しかなかったけど、慣れるにつれてそこまでつらいものではなくなっていった。なぜならこんな私でも気軽に話しかけてくれる人が数人はいたからだ。自分はつくづく運が良かったんだと思う。シーザーに出会ってからは毎日が楽しくて当時の生活など思い出すこともなかったため、こんな気持ちは久しぶりだ。



「…それは本当なのかナナシ」
「うん、あれがヒューマンショップっていうのと同等のものかはわからないけどね。それにこんなこと言ったら嫌われると思ったから言わなかったの」
「バカめ、このオレがそんなことでお前を嫌いになると思ったのか」
「最初は思った」
「シュロロロロ…オレにはナナシがどんな境遇で生きてきたかなんて関係ねェさ」
「ありがとうシーザー」



私を再び抱き締め、あやすように背中をさする。それが非常に心地よかった。

本当にシーザーに会えてよかった。


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