:: Finally, he came to see me!
「ふんふーん」
私は研究所の外にある薬草畑に水をやっていた。シーザーがこれを育てていると思うとおかしくて笑える……いや、むしろちょっと可愛くない?どんな効能を持つ薬草なのかはあえて聞かなかったけど。あ、ついでに研究に使う分も取っておくように言われたんだっけか。私はよいしょ、と薬草を摘むために腰をかがめる。それにしても今日はいい天気だ。雲一つない晴天とはまさにこのこと。そんな時、一つ変なことに気が付く。
「…………なんだアレ?」
青空の中、何かがこちらに向かってきている。鳥かな?だとしたらとんでもないデカさだな。間違いなく食われる。それはスピードを落とすことなくどんどんこちらに近づいてくる。私は怖くなってキリキリの能力で姿を消し、私がいたところを中心に霧が漂いだす。怖いなら逃げてしまえばいいのだろうけど、気になってしまった以上正体を突き止めたい。面倒くさいことが嫌いなくせに好奇心は人並み以上にあるのだ。
「なんでこの辺りだけこんな霧深ェんだ…」
「あ…………!」
「………誰だ」
思わず息をのんだ。そこには新聞の写真でしか見たことのない人物がいた。私の声を聞き逃さなかったその人は瞬時にその場の空気を張り詰めさせる。どうしよう今出て行ったら殺されちゃうかな。このままシーザーのとこに行くべきだろうか。一人でおたおたとしていたらその人はいつの間にか自分の目の前にいた。そしてまるで私が見えているかのように目線も同じ高さにある。
「オレの勘をみくびってもらっちゃ困る」
「!」
私は観念して姿を現すことにした。
「……お前がナナシだな」
「はい。ジョーカー、じゃなくてドフラミンゴさんですよね?」
「ああ」
「なんで私がここにいるのわかったんですか?」
「フッフッフ!驚いたか?」
「こんなこと初めてで、」
シーザーは私が姿を消すといつもどこにいるかわからないらしい。そのあたりはやっぱり王下七武海というべきか。
「それにしてもすげェ霧だな。キリキリの実か?」
「はい、シーザーに食べさせられました」
「そいつは今どこにいる?」
「研究所にいるはずです。……あの、」
「なんだ?」
「握手、してもらえませんか?」
「フッフッフッフ!いいぜ、それくらい何回でもしてやる」
出した手をぎゅっと握られる。普通の人よりも大分大きな手。スラッとした指が妙にセクシーに映る。
「ほああああ、ありがとうございます…!」
「そんな喜ぶことか?」
「だってこんな機会滅多にないから…!」
「ならもう少しオマケしてやる」
「え、」
何のことか分からず聞き返そうと思ったが、それよりも早く彼が一気に距離を詰めて私の頬にキスをした。
「……ドフラミンゴさんっ!」
「フッフッフ!言っただろお前が気に入ったと」
「私にはシーザーがいるんですっ」
「細かいことは気にすんじゃねェよ」
そう言って私の肩を抱きながら研究所の方へ歩を進めるドフラミンゴさん。いや、だめだってこの感じ。シーザー泣いちゃうから。離れようとしても体格差がありすぎてどうにもならない。
そして研究所に入った途端、シーザーが断末魔のような叫び声を上げたのは言うまでもない。