:: You failed again!
「うお!また爆発しやがった!」
「わ、シーザーが実験失敗してる!」
「こ、これは爆発したんだから成功だ!」
「そういう風には見えないけど?」
「ぐっ…!」
私は近くにあったホウキを手にする。粉々に割れて散らばったガラスの破片を始末するのはいつも私の仕事だ。
「今度からは自分で掃除してよねー」
「おォ、お前はいつからそんな冷たい人間になったんだナナシ…!」
「当然のことでしょうが」
「昔はオレのことを『しーじゃー』って呼んでずっと離れなかったくせに!」
「私、あなたと出会ったのそんな昔じゃないよね」
「シュロロ!そうか、これはオレが今朝見た夢だったな!」
「…」
ホウキを持ったまま数歩後ずさる。
私がシーザーと出会って数年が経つ。彼に出会う以前、私は海賊船で半奴隷として働いていた。そしてある時、嵐によって船が転覆し、一人流れ着いた先の島にこの男がいたというわけだ。シーザーは私の目が覚め、体力が戻るまで面倒を見てくれた。最初はちょっと不気味な人だと思ったけど、話してみれば意外と笑うし、面白い。たまに変態じみたこともいってくるけど。すっかり彼と打ち解けた私は、船も沈み島を出るにも出れない状態だったため、彼のところに置いてほしいと頼んだところ、二つ返事で了承された。そして現在は恋人兼彼のそばで下働きをしている。
「シーザーがこんな性格の人だなんて思わなかった」
「この霧、またお前の仕業かナナシ?」
「あは、バレた?」
「おい、今すぐヤメロ、手元が見えねェ!」
その瞬間また大きな爆発音。どうやら手元が狂って違うビーカーに薬品を入れてしまったらしい。
「今度こそ失敗だね!」
「うるせェエエエエェェ」
私は部屋中に充満していた霧を飲み込むように大きく息を吸う。この"キリキリの実"はシーザーによって与えられた能力だ。彼曰く、「霧とガスなんてペアみたいでいいじゃねェか!」とのことだが、なにがいいのかよくわからない。でもこれのおかげで霧をいつでも発生させられるし、姿を消すこともできる。面倒事が苦手な私にとっては非常に重宝する能力だ。
「なにしやがんだナナシ…!」
「シーザー、ガラスが頬に刺さってるよ」
「なにっ!?」
「ほらここ」
私はためらいもなく彼の頬からガラスの破片を抜く。すると、彼の頬には赤い血が滲む。ただでさえ白い肌なもんだから赤がとても映える。
「絆創膏でも貼っとこうか?」
「いらん!これは名誉の負傷だからな!シュロロロロロ!」
「失敗したから怪我したんでしょーが」
「いや、これは成功だっ」
「どーでもいいけどちゃんと片付けといてよ?」
「ああわかった!…じゃなくて!それはお前の仕事だろォォォォオオオオォ」
こんな感じで毎日楽しく過ごしてます。