マスターとの楽しい日々! | ナノ
:: Grampus and Penguin.

特に行くあてもなく、二人でブラブラと歩いていると、目の前に人だかりが見えてきた。



「、なんだろ?」
「さァな」



特に興味もなかったが、横を通り過ぎる時に話し声が耳に入り、ピタリと足を止めた。ナナシが不思議そうな顔をしてこちらを見てくる。オレはそれを見やり、人だかりの中にいた男を無理やり捕まえた。



「おい、そこのお前」
「ひっ」
「今、天竜人がどうとか言ってなかったか?」
「あ、ああ、そうだが」
「そいつらが今この島にいるのか?」
「そ、それどころか今、この近くの広場にいるはずだ」
「本当かそれは」



その問いかけに男は無言で首を縦に何度も振る。面倒なことになった。自分はともかくナナシにあんな奴らを見せたくないというのに。オレは素早くナナシの手を取って、来た道を戻り始める。



「ちょっと!どうしたのシーザー!」
「…天竜人が来てるらしい」
「はっ?てん…なに?」
「いいからどっか遠く行くぞ」
「ちょっ、わっ!」
「?」



手を引いていたナナシが驚いたような声を上げ、手が離れる。どうやら人に当たったようだ。後ろを振り返ればナナシが地面に尻もちをついていた。その近くには二人組の男が立ち止まっている。どうやらあいつらのどちらかにぶつかったらしい。



「おいおい気ィつけろよ!」
「すいませ…ってあれ、あなたたちさっきの」
「ん?誰だっけか?」
「もう忘れたのか。さっき道を教えてもらっただろ」
「……ああ!」
「目当てのお酒は買いに行けましたか?」
「もちろん!アンタのおかげですぐに店を見つけられたぜー!」
「それはよかったです」
「そんなことよりケガはないか?」
「あ、はい」
「…………」



なんだこの状況は。まったくわからない。というか誰だこいつら。なんでナナシとこんなに親しげなんだ?次から次へと疑問が浮かび上がってくる。しかもナナシにいたっては落ち着いた風な男の方の手を掴んで立ち上がらせてもらってんじゃねェか。



「おいナナシ」
「なに?」
「だ、誰だこいつらは」



するとナナシが近くに駆け寄ってきて、二人組に背を向けながら小声で囁く。



「シーザーも見覚えあるでしょ、」
「ねェよ」
「思い出してよ」
「あんな奴ら知らん」
「ちょっとは考えてよ。彼らはさっきアナタが窒息させようとしてた人たちでしょうが…!」
「あン?あんな格好だったか?」
「そうだよ」
「そんなことよりもナナシにベタベタしやがって…気に食わねェェェェエエエエェェ…」
「そんなことより!頼むから窒息させようとしたのは自分だなんて言わないでよね!?」
「なんでだ」
「いいから!」



そういってナナシは再び奴らの方を向く。笑顔で。笑 顔 で 。その笑顔、オレに寄越せって言ってんだろうがァ!



「お二人は体調の方はもう大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない」
「それにしても不思議だったよなー、いきなり息ができなくなるなんてよォ、」
「シュロロロ、あれはお前らが悪、ドスッぐはァッ」



裏拳が飛んできた。ナナシから。いい拳持ってんじゃねェかァァアアアァ、かなり痛ェ!いつのまにこんな力を…!



「お、おい、後ろの人、大丈夫か」
「こ、呼吸が苦しくなるのってこの島の不思議現象なんですかね…!」
「あー、なるほどなあ!」
「でもそんな現象聞いたことねェな」
「船長にも一応報告しとくか!」
「そうだな」
「船長って?」



ナナシが不思議そうに尋ねると男の一人がしまったという顔をし、その横でもう一人が軽くため息を吐いた。船長という言葉を聞いた瞬間、自分にはその意味をはっきりと理解することが出来た。こいつらの雰囲気は海軍やどこかの国に仕えてるやつらとは一線を画している。船長がちゃんといる船に乗っているとしたらこいつらは間違いなく海賊だろう。こんなやつらと一緒にいたらナナシが汚れてしまうと思い、オレは無言で後ろからナナシの服をひっぱった。が、無視をされた。ひでェ。



「あー、オレたち海賊なんだよね」
「へー、そうなんですか!」
「あれ、驚かない?」
「…なんで驚くんですか??」
「何でって…ねえ?」
「オレに振るんじゃない。…そろそろ時間だ」
「時間?」
「出港の時間だ」
「あの、それってもしかして船のことですか?」
「そうだが?」



それを聞いた瞬間、またナナシがこちらを向き、声のトーンを落として話す。



「シーザー、聞いた?」
「…………何も聞いてねェ」
「なにスネてんのよ」
「な、スネてなんかいねェよ!」
「いいけど、あの人たち船持ってるんだってさ」
「それがどうした」
「…乗せてもらおうよ?」
「はァ…!?相手は海賊だぞ!」
「でもいい人っぽいし、研究所に帰るためにまたずっと海を眺め続けるのもつらいじゃんか」
「あいつらは良さそうに見えても船にはもっとたくさんいるんだぞ!?男が!」
「何かあったらその時はシーザーに守ってもらうから大丈夫」
「そ、そんなにオレを頼って…!シュロロ「すみません、私たちも途中まで乗せてもらえませんか!」ってオイィィィィイイイイィィィ!!?」



男どもは一瞬ぽかんとし、どうする、と小声で話していたがその相談はすぐに終わり、答えはオッケーとのこと。畜生めェェェエエエエェェ!なんでこんなことに…!



「船はここを真っ直ぐ行ったところに停めてあるから行くぞ」
「はい」
「そういやァ、名前は何て言うの??」
「ナナシです!で、こっちはシーザー」
「シーザー………?なんか聞いたことあるような…」
「あ、私もあなたたちの名前を聞いていませんでした」
「あァ、そうだったな」
「オレがシャチでこっちの大人ぶってるのがペンギンだ!」
「大人ぶってるんじゃない大人なんだオレは」
「短い間ですけどよろしくおねがいします」
「ケッ」
「シーザーもお礼くらいしなさいよー!」
「シュロ…!殴ろうとすんじゃねェ!」
「……なんか変わった二人組だな」
「でもナナシちゃん可愛いからいいんじゃねーの?」
「またお前はそんなことを…」


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