「……最近シャチやペンギンが冷たい」 「は?」 情事後、ベッドで俯せになりながらそう呟く私。前は全然そんなことなかったのに、最近は話しかけるとすぐに私から視線を外し、逃げるように去っていく。理由が分かればどうとでも出来るのに、それが全く思い当たらない。私が何かしたのだろうか。いずれにせよ、同じ船に乗っている以上皆と仲良くやっていきたいという思いが強い私はこうして船長であるローに相談してみたのだ。けれど当の本人はベッドの端で私に背を向け、水を飲んでいる。私によって付けられた爪痕が痛々しい。 「お前も飲むか」 「何を」 「水」 「うん」 ローがこっちを向いてそれまで飲んでいた水の入ったボトルを私に渡す。私は身体を起こしてまるでお酒でも飲んでいるかのようにそれをごくりと一気に飲む。冷水が渇れた喉を通り、とても気持ちがいい。 「私ペンギンたちに何かしたのかなあ」 「知らねェよ。つーかなんでオレにそんなこと話すんだ」 「だってローはこの船の船長じゃん」 「だからっていちいちクルーの悩みなんか聞いてられるか」 「ひどっ」 ローが私の横に来て再び横になり、私の髪を指で梳く。だけどその眼は鋭かった。 「え、なんか機嫌悪い?」 「なんで今あいつらの名前を出すんだお前は」 「だってこーいうときくらいにしか相談できないじゃん」 「どうせお前が何かしたんだろうが」 「でも全然心当たりないもん。ロー何か知らない?」 「さァな」 私は溜息をつきながら枕に顔を埋める。なんでだ。というかいつからこんなことになった。私は記憶を必死にたどる。彼らが冷たくなったのは恐らく約一週間前からだ。でもその理由がさっぱりわからない。私は枕から顔を上げる。 「ねえ、」 「なんだ」 「一週間前なんかあったっけ?」 「風呂場でヤった」 「もう、そんなこと聞いてないよ…」 「その時にあいつらに聞かれたんじゃねェのか」 「え、聞かれたって何を」 「喘ぎ声」 「……私の?」 「オレがそんな声出してどうする」 ローが私の顎に手をやって、ちゅっ、と軽くキスをする。だけど私の頭の中はそれどころじゃなかった。これって結構まずいんじゃないだろうか。お風呂場でヤってるのをバレた挙げ句、声まで思いっきり聞かれたなんて。でも、今一度思い返してみれば彼らの態度がどこかよそよそしくなったと感じたのはその翌朝からだ。記憶がはっきりとしてくると同時に恥ずかしさもこみ上げてくる。 「どうしよう明日からペンギンたちの顔見れない」 「原因らしきものがわかったんならそれでいいじゃねェか」 「こんなことなら分かりたくなかったよ…」 「もしかしたら今までのも聞こえてたかもな」 「!!!」 |