「ドフラミンゴって泣いたことある?」 ふと気になって聞いてみた。泣くということは人間の本能の一部でもあるはずなのに、私は今まで彼が涙を流すところを見たことがない。 「あァ?何だ急に」 「あ、啼いてるじゃないからね、泣いてるだからね」 「いつも啼いてんのはテメェだろうが」 「なっ、違うし!」 ドフラミンゴがニヤニヤしながら近寄ってくる。身の危険を感じて後ずさるが、すぐに壁に背中が当たる。ためらうことなく距離を詰められ、顎をとられてキスをされた。 「…ドフラミンゴが泣いてる姿を見たい」 「フッフッフ!サディストにでもなったつもりか」 「最近泣いたことある?」 「ねェよ」 「なんで」 「知るかよ」 肩に手を置いて再び寄せてきた唇をぐい、と掌で押し返す。 「なんで泣かないの?」 「この歳で泣くほうが可笑しいだろ」 「でも人は嬉しくても泣くよ?」 「嬉しかったら笑えばいいじゃねェか」 「まあ、それはそうだけど…」 「だったら何も深く考えることはないだろうが」 「ん、そうなんだけどさ、」 「まァ、生まれたときは毎日泣きまくってただろうなァ」 「それ以外では?」 「……なんでそんなこと言わなきゃなんねェんだ」 サングラスの奥の瞳がゆらりと動く。何か隠した。そんな気がした。それと同時に彼が苛立っていることも感じ取る。 「怒った?」 「フッフ、オレは無意味な会話は嫌いだと前に言ったハズだが?」 「ごめん」 「そんなにオレを泣かせたいのならオレのもとから離れていくことだな」 「え?」 最初はその言葉の意味が分からなかった。しかし、すぐにそれは関係を絶つということだと理解する。ということは。 「もし別れたら、ドフラミンゴは、泣くの?」 「そりゃあな。でもお前は絶対にそんなことしねェだろ」 「うん、そんなことできないよ」 「だったらお前はオレを泣かすことはできねェ」 そう言って彼はいつもと同じように口角を上げてニヤリと笑うのだった。 |