「ふざけてんのかナナシ」 「ごめんってば…」 ローはちょっとしたことでもすぐに癪に障るらしい。今日だって少し寝すぎて言われた時間に彼の部屋に顔を出せなかっただけのことだ。なのになぜ私は壁に追い込まれて喉元に刀を当てられなければならないのだ。まあ、刀と言っても鞘に入ってるから身の危険は何も感じないんだけど。 「刀下ろして?」 「反省したか」 「ん、もうベポともふもふして甲板で寝ないようにする」 「今までに何回もそう言ってるよな」 「だって気持ちいいんだよ?」 「ベポのとこ行くならオレのとこに来い」 「もふもふしてくれるの?」 「もっといいことしてやる」 「セックス以外で?」 ガチャ、と刀を置き、私の首筋に顔を近づけていたローの動きが止まる。 「なんだ、ヤるだけじゃいやなのか」 「んーなんとなく?」 「じゃあ何したいか言ってみろ」 「えー、そんなこと言われてもなあ…」 自分が今何をしたいのかがはっきりとしない。でもここで何か言わなければいつも通りの流れになるに決まっている。 「んー…何もしたくない」 「……何だと?」 うわ、ローの額の血管がピクって動いた。怖い怖い。 「えーとね、たまにはローとのんびりまったりしていたいというか?」 「どうやって」 「わかんない」 「……こういう感じか」 ふわ、と両手を背中に回されて抱き締められる。あ、こーいうのもアリかも。そのまま床に座り込んで向き合った状態になり、また抱きしめる。私は目の前にあった薄い胸板に頭を押し付ける。 「あー、幸せ」 「こんなことでいいのか」 「こーいうのでも愛は感じられるんだから」 「そうか」 「うん」 ローの顔が近づいてきたからキスをされるかと思ったけど、今日は違った。額をコツンと当てただけだった。息遣いもわかるくらいの近さにローがいる。彼が近くにいるというだけで心の底から喜びが込み上げてくる。 「ふふ、やっぱり私、ローのこと好きだ」 「今更だろ」 「あ、服の中に手入れないで」 「チッ」 |