海賊 | ナノ

「雨降ってきたあああああ」



船を下りて一人で町で買い物をしていた私は急いで船のある港まで急ぐ。うああああせっかく買った服が濡れていくうううう



「船長ただいまっ」



船に戻り、自室にいるローに帰ったことを告げる。私の濡れた服や髪をみるなりローは顔をしかめる。



「おい、二人の時は名前で呼べといったはずだ」
「あ、ごめんねロー」
「つーかお前びしょ濡れじゃねェか」
「だって外!雨降ってるもん!」
「その格好で入ってくんな。部屋が汚れる本が濡れる。服着替えてからもう一度来い」



私の心配よりも自分の部屋の心配か。私が風邪ひいたらめちゃくちゃ心配するくせに!
部屋から追い出された私は、とりあえず服を着替えるために部屋に戻った。買ってきた服を着てみたかったけど濡れていたため断念。適当にあった服に着替え、再びローの部屋に行くと、彼は窓から外を眺めていた。



「ロー、何やってんの?」
「…そろそろ来る」



何が、と言おうとしたその時、



ピッシャーン!!!



窓の外が鋭く光り、雷鳴が鳴り響いた。



「ッ、ギャーーーーーーーー!!」



海の人間であるくせに雷が大の苦手な私は咄嗟にローのベッドに潜り込んで耳を塞いだ。



「お前、海賊だろうが」
「そんなこと言ったって…!」
「毎度のことだが雷ごときでそんなビビんな」
「怖いものは怖いのーーーー!」
「仕方ねェな…」



チッ、とローが舌打ちをしたと思ったら、背中のほうがモゾモゾと動いて、私はローに後ろから抱きしめられている状態になった。



「…ロー?」
「いい加減雷くらい慣れろ」
「努力します」



突然ベッドの中で身体を反転させられたかと思うとキスをされた。自分のより温かい唇で、雨で冷えた身体の温度が少し上昇した気がした。



「船長」
「おい、名前、」
「ロー、最初からこれがしたかったの?」
「お前の顔を見たらキスしたくなんだよ」
「ローの唇温かいー」
「ナナシのが冷たすぎるんじゃねェのか」
「あは、そうかもしんない」



私がせがむように口を少しだけ開けばすぐにそれに気づいて舌をねじ込まれる。それが気持ちよくて雷のことなんかすっかり忘れてしまっていた。気が付けば雷は鳴りやんでいて、小雨になっていた。



「雷、鳴り止んだな」
「あーよかった!あ、ベッド借りちゃってごめんね」



そう言って私はベッドから出ようとした。けど、それは彼に強く腕を掴まれたことによって未遂に終わった。



「さっきのは間違いだったな」
「え、なんのこと」
「お前の顔見たらキスしたくなるっつったが、あれは間違いだ」
「?」
「キス以上のことまでしたくなる」



掴まれた腕がグイッと引っ張られ、再び身体がベッドに沈む。目の前には天井と悪い顔で口角を上げるこの海賊船の船長しかいなかった。



「まだコトは終わってねェだろ…?」
「ロー、めっちゃ悪い顔してる」
「ほんとに悪いことしてやろうか?」
「ほんとやめてくださいお願いします」