「同じ部活で同じクラスまでならまだよかったんだけど、日直までペアになる日が来るなんてなんの因果かな」

そうやって相変わらずの悪態をつくなまえ。その横を歩くのは、なんというかにやけが止まらなかった。
今日は黒板の端には日直、みょうじと書かれた文字の隣に俺の名前が書かれた日。今日の授業も半分は終わって、俺が黒板を消している間にてっきり日誌を書いているんだと思っていたが、終わってみたら俺の隣の席はもぬけの殻だった。トイレにでも行ったのかと思ったが次の授業が始まる前にクラス全員分のノートを職員室に取りに来いと言われていたのを思い出し、俺は慌てて教室を飛び出した。案の定廊下を呑気に歩いていたなまえを見つけて肩の力が抜ける。

「これお前一人で持ってくつもりだったのかヨ」

「…これくらい私だって持てるし」

「あのなァ」

「別に、いっつも全員分のドリンク持って移動したりしてるし、大丈夫なのに」

そういう問題じゃなし、全く話を聞きやしねえ。こうやって一人で全部物事を背負い込むから目も離せないっショ。だいたい今日の役割分担も俺が言い出さなかったら全部一人でやるつもりだったっぽいし、まあ何でもこなせる力はあるのは知ってるけど、もうちょっと俺に頼ってもいいんじゃないかとは思う。いや、頼ってほしいっていう俺の願望だ。

「ったく、そんなに頬膨らませても可愛いだけっショ」

「か、かわ!?な、何を言い出すんだ君は!」

「クハッ、照れてんのか?」

からかってやればこうやってすぐ顔赤くして可愛い以外のなんて思えばいいんだ。普段のそっけない言葉も本心から言っていないことを俺は分かっている。全部強がってるだけで、素直に慣れないのも俺は全部知ってんだ。

「で、なんで黙って一人で行ったっショ?」

「……別に」

「別には理由になってねえだろ」

「……ま、巻島が」

「俺が?」

「……巻島、練習で疲れてそうだから、休んでてもらいたいだけ、だよ」

「…………」

「日直って意外と仕事あって動き回ること多いから、大事な選手だししっかり休んでもらわないと…ってなんで笑うの!」

「っ、あー悪ぃ悪ぃ」

「……言わなきゃよかった」

あんな言葉の裏で、こんなにも俺のこと(正しくは自転車部全体のことだろうけど)を考えてくれてたら、それはうれしいとしか思えない。もうちょっと素直になればいいのにとも思う反面、これがなまえらしくて愛おしい気もした。

「巻島の笑う顔気持ち悪いんだから笑わないで」

けど、その一言は流石にグサッとくるっショ。

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