「ほんまどんくさくて腹立つ」

「えっ、ご、ごめん」

「すぐ謝るんも腹立つ…ってこれ前にも言うたわ」

「そ、そうだったかな」

「なまえの脳みそは鶏以下やな」


もうええわと呆れ半分にため息をつく。コイツに構ってる時間もおしい。なまえはいつものことで慣れてしまっているのか、何も理解してへんのか分からんけど苦笑いでいた。それを見て僕はまた不快感を覚える。これだけ言うても何も感じてへんような顔して、僕の言うたこと右から左に流れとるんちゃうか?脳みそもあれやけど耳も飾りもんやったとは。
ああ、もうなまえと一緒にいる空間が嫌で仕方ないと、自転車のメンテナンスは明日の朝にやろうと決めた。


「…明日までに記録まとめとけ」

「うん、わかった!おつかれさま」


それだけ言ってなまえを一人残して部室から出た。視界に映った学校からは体育館の光がぼんやりと点いていた。ご苦労なことにバスケ部かなんかはまだ練習しとるらしい。夜間は流石に視界も悪うて道も見えんようになるから、こっちの練習は街灯が着き始める前には終わるけど、なんやかんやでいつも帰るのはこんな時間になる。僕の自転車のライトを点けて跨った。
自分でなんやかんやて言うたけど今思い返してみると、大体はなまえのことで腹が立って少しは改善したらどうなんとか色々言って時間が経っているような気がした。毎日毎日飽きもせんと同じ失敗の繰り返し。鈍くさいにもほどがある。最初よりは流石にマシになった気もするけど、それも毛が生えたようなもんで命令を聞かんザクよりも僕を苛立たせていた。

「アイツがいのうなったら僕も少しは早く帰れるようになるんやろか」

そうやったら、本気でやめさせてしまおうか。そない思ったけど、それをすんのも面倒な気がしてきた。
何度も失敗して、それでも僕はなまえのへこたれた姿を見たことがない。その姿を見て見たくもあるから僕はこんなことを続けているんだろうか。

(なまえに構っとる時間なんてあらへんのに)

次のインターハイまでに完璧に仕上げなければいけないというのに、僕はこんなことに突っかかっとる。そういえば、いつも記録を明日までにまとめておけとなまえ言っとるけど、なまえは一体いつに帰っているんやろか。部員全員の記録となると結構な量もあるはずやし、それに加えて部誌なんかもある。それに部室の片付けもあるはずや。それを時間内に終わらせることが出来ないこと自体まずカスバエなんやけど、そういった事務的なことだけは明日までにはきっちり終わらせている。それにも相当な時間を費やしているんだろう。
信号待ちになってペダルを止めて、携帯を取り出した。

「もしもし?御堂筋くん?」

「…………」

「もしもーし」

「…………」

「あれ、間違っちゃったのかな…?切るねー」

「お前、まだ学校なん?」

「あっ、あれ、御堂筋くん?う、うん、まだ学校だけど」

「ふうん」

「もしかして忘れ物でもしたの?御堂筋くんから電話なんて来たことないからびっくりし、」

信号が青になったので電源ボタンを押して、ポケットの中に突っ込む。会話を途中で切ってしまったことには何の罪悪感も感じない。けど、なんやのこれ。

「僕がなまえに構ってほしいみたいやん」

マジありえへん。キモォ。

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