「ちょっと、外で待ってくれないか?」

「え、なんで」

「いいからいいから」

部活が終わって、私と新開はもう部屋におやつがなかったと思い出して一緒にコンビニへおやつを買いに来た。学校の購買もとっくにしまっている時間だったので、コンビニへは学校を出て少し歩かなければならなかったが、それが今日は憂鬱に感じられなかった。一人より二人の方がその道は短いと思えるからだ。
が、私がお菓子コーナーに直行し、しょっぱい系か甘い系か、それとも部屋をあったかくしてアイスでも食べてやろうかと悩んでいたところ、新開に神妙な顔でそう言い渡された。かくしてまだ寒さが残る外へ追い出された私。

「泣けるな」

夜だというのに、もう夜ですごく寒いというのに、とんだ仕打ちだ。私が一体何をしたと言うのだ。とりあえず手からだんだん冷えてきたので、ポケットに手を突っ込みマフラーに顔を埋める。すぐ後ろには温かい空間があるというのにこのお預け感は少しつらい。しかし、理由も言わすに外に出ろだなんていうのも何かあるなと思うと中には入れなかった。
もしかして私は気づかないうちに新開の癇に障るようなことでもしてしまったんだろうか。そう思ったら、普段温厚な新開を怒らせてしまったかもしれないということで少し胃が痛くなる。
すると、新開が入り口からひょっこりと顔を出した。

「おめさん、好きなお菓子メーカーは?」

「は?」

「ないのか?」

「え?ええと…ロッテとか」

聞いたらすぐに中へ引っ込んでしまった。
私は本当にぱっと思いついたのを言っただけなんだが…。というか、もう入ってもいいかと思って私も後ろについて中に入ったが、「まだもうちょっと待ってて」と言われた。本当に意味が分からない。

「いやぁ、待たせたな」

「ほんとにね」

「そんなに拗ねないでくれよ」

「だって寒いかったし」

「といってはなんだけど、これやるよ」

新開が袋からがさがさと何か取り出して、そういえば私お菓子買えてないなあと思った。こうなったら、新開からお菓子を奪ってやろうかと思ったんだ。

「バレンタインデーのお返し」

ご丁寧に相手を射抜くポーズまでとって。残念ながら私は射抜けないぞーと思いながらその指先を軽く振り払ったらしょんぼりとされた。

「なるほどね、こういうこと」

「ごめんな、待たせちまって」

「んー、許す…と言いたいところだけど、ゴディバくらい欲しかったなあ?」

店頭に置いてあったやつ。冗談のつもりで笑って言ってやった。すると、新開はまた袋を漁り始めて思わず私の顔も固まってしまったんだ。

「って言うと思ったからな」

「わー…流石新開分かってる…」

「さ、帰るか」

「ま、待って、私お菓子買えてない」

「おめさんの分も買っといたから安心してくれ」

私がバレンタインにあげたのは部活全員に配ったやつで、一人分の材料費なんて何十円かのたくさん作ったうちの一つなのに、私には多すぎるお返しが手の平にのっていた。うれしいというか私はびっくりして何も言えなかった。今日がホワイトデーなんてことも忙しくて本当に忘れていた。バレンタインと違ってホワイトデーなんかそこまで目に見えるものでもなかったから。
でも、うれしいものはうれしくて新開ってこういうところきっちりしてるよなあと思ったんだ。

「あ、ありがと…うれしい」

「あー、そうだ。ちなみにホワイトデーにそういうのあげたのおめさんだけだからな」

歩いていた私の足が止まって、新開がまた指で私を射抜いていた。




もどる

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -