(体育の授業中)
「時になまえ」
「んー、なんだ?」
「なまえは髪を伸ばさないのか?」
「急だね」
「いや、同じクラスになった時から全く伸びていない、というよりは伸ばさないのかと思ってな」
「あー…まあ、これはずっと昔からだけど…だって髪長いと邪魔じゃないか」
「しかし女の子というものは髪が長くてふわっとしてて、いかにも…甘い感じ?なのが良いのではないか?」
「ええ…それが良かったらとっくに髪長くしてるよ…。ほら、スポーツする時だって長かったら顔にかかったりするし」
「結べばいいだろう結べば!ほらあんな風に!」
「あー、××さん?あの子はかわいいよね〜あっ目が合った」
(照れている?なぜ××さんんはなまえと目が合うだけで照れる?女同士だろう!?)
「でも、髪が短い方が楽だしなあ」
「そんなことを言っていると女子力が低下するぞ!」
「まあ、東堂の方が女子力高そうだよね」
「ワッハッハ!それはいつも応援してくれている女の子達のためだからな!」
「ははっ、そこまでするなんて東堂らしいな。けど、私も東堂はカッコいいと思うよ」
「…心にもないことを言うな」
「本心、だ。もっと言おうか?」
「(なぜこいつはこういうことをさらっと言える…)いや、いい」
「東堂はまず誰にでも優しいんだ。女の子にも対しても男に対しても。だから東堂の周りはいつもにぎやかだな。人がたくさん集まってくる。もちろん顔が良いっていうのもあるぞ?でも、それでもその一人一人の期待に応えようとするところは…」
「っなまえ!いいと言ってるだろう!」
「えー…」
(まったくこいつは、なんてやつだ…)
「とにかく、私はこれからも伸ばすことはないだろうな。きっと」
「…かくいう俺も髪を伸ばしたお前を想像できない」
「だろう?あっ、次の試合は私のグループか。行ってくる」
「ふむ…」
「東堂くん!」
「おお、××さん。おつかれ」
「うん、ありがと!あの…なまえちゃんは?」
「なまえか?なまえは試合中だから今はコートの中だ」
「あっ、そっか…」
「(あらかさまに残念そうだな)××さん少し聞いてもいいか?」
「うん?なに?」
「俺は常々思っていたのだが、いったいなまえのどんなところが…」
「きゃああああああ!」
「なんなんだ!」
「やったあ!!ゴール!今なまえちゃんゴール決めたよ!めっちゃかっこいい!」
(…なるほどな)
「いっ今こっち見た!しかも手振ってくれてるし!…なんか言ってる?ふあああ…ホントなまえちゃんってイケメンだよね…優しいし、かっこいいし…」
「なまえには戻ってきたらさっき俺に言った言葉をそっくり返してやろう」
さばさばしてて、人当たりが良くて、髪が短いからなおさら見た目から変なイメージも持たれにくいんだ、なまえは。女の子達にも、俺にも。
なにも口パクで俺の名前を言わんでもいいだろうに。ああ、心臓がうるさい。
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