眼鏡をかけると真面目とかクールに見えるとかで眼鏡の人気は高まっている世の中。私もその流行にまんまと乗ってしまったのか、眼鏡をかけている人が何かと気になる眼鏡フェチというやつである。
というか、元々の私の好みなのか元気で活発な人よりもクールな人の方が元々好きだったのかもしれない。


「金城……」

「なんだ、みょうじ」

「…金城、眼鏡かけてたの?」


朝、学校に来ていつものように友達におはよーと挨拶している時にふと目に入った。思わず足を止めてしまってじっと見入ってしまったんだ。別になにか特別なことが起こっていたわけではないのだけど、眼鏡をかけて、本を静かに読んでいる金城がいた。いつもと変わらない席で、本を読んでいるのもいつも通り。時々くいっと眼鏡の淵を上げるのが様になっていた。元がクールな性格だから、より一層際立ってそれが金城には似合っている。知性的で、真面目そうな、もう私の思い描いている通りの眼鏡だ。普段の眼鏡をかけてない金城で見慣れているせいか、それとのギャップが拍車をかけてかっこよく見える。


「ああ、最近目が悪くなってきてな…」

「そ、そう」

「ん?どうした、みょうじ」

「なんでもない!…なんでもないよ」

「………?顔が赤くないか?」

「っ、!」


いや、金城は元々かっこいいとは思ってた。私の友達の中にも頬を赤らめて金城が好きだって言っている子はいるし、部長とかやってるし?これは関係ないな…。でも私の中の金城はそこまで大きな存在ではなかった。それでも、こうやって眼鏡をかけられると私の心を鷲掴みされているようで、思わずどきっとしてしまうんだ。
ちょっと距離をあけて話していたのに、金城が立ち上がって前に来たせいでより意識してしまう。いつもの金城となんら変わりないのに、おかしい。


「へっ?なんともないよ!」

「なんで後ずさっているんだ?」

「ち、近づかなくていいから」

「本当に大丈夫か」

「大丈夫だってば…」

「しかし、ゆでだこのようだぞ」


金城の世話焼きも今は困る。不意におでこに手を当てられるんだもん、そりゃあ顔も熱くなる。心の中で必死にいつもの金城だいつもの金城だと呪文のように唱えるけれど、まるで効果はなし。そう、私は眼鏡が好きであって金城が好きなわけではない!


「熱があるようだが…」

「ちがう…」

「?」

「めがね」

「眼鏡がどうかしたのか」

「眼鏡かけてる人、好きなだけだから…ちょっとどきっとしただけ」

すると、金城は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして黙った後に、控えめに笑った。

「フッ、なんだそんなことか」

「笑わないでよ…!」

「てっきり俺は具合でも悪いのかと思ってな」

「…いたって健康です」

「そうか、みょうじは眼鏡が好きなのか」

「……そうだよ」

「なら、これから毎日かけてこないとな」

最後に笑ったのはいつもの金城の世話焼きなのだと思うけど、やけにその後もにやついていたのが気に入らなかった。けど、これから毎日金城を見る私の心臓が持ちそうにないと思った。



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