この話の付き合う経緯というか前のお話)




学校なんて面倒なもののなんでもない。僕には自転車だけがあればええ。授業なんてかったるいもんに出とる時間があったら自転車に乗っとった方が有意義やし、それに関わる全ての関わり合いも全部いらん。それでも、せっかく学費をはらってもろてるからにはちゃんと授業も出とかなあかんとは思うから、しゃあなしに毎日授業に出とるだけや。無駄に長くて眠い。これも休息だと考えれば、まあいけんこともない。

せやけど、委員会いうやつはぶっちゃけいらんやろ。
全員がなんかの委員会に入らなあかんとかなんやの。知らんうちに図書委員になったはええけど、放課後はやっと自転車に乗れんねんで。当然委員会なんかより自転車優先で今までは部活あるから言うてずっともう一人の女子(名前は忘れた)に任せてきたけど、いきなり何で「次から委員会にでないと部活禁止だって図書委員会の先生言うとったで…」とか言うねん。訳分からんわ、キモォ。それもビクビクおどおどしながら言いおって。キモいし、ウザいし、その上そない重要なことを早う言わんとかほんま使えん奴やな。

ため息をつきながらも、部活禁止なんは僕にとっても痛手やから仕方なく図書室へ初めて向かった。


「御堂筋くん、だよね?ちょ、ちょっと手伝っ、て!」

「ハァ?」

扉開けて適当に話聞いとけばええんやろと思った矢先に小さい女子に声を掛けられた。ぷるぷると震えながら何しとるんやと思って足元を見ると、もう限界いうくらい背伸びして手先を見ると本を持っていたので、そういうことかと手から本を取って棚に入れてやった。

「ありがとう…助かりました…」

「…別に」

「私、背低いから上の方届かなくて」

「脚立とか使えばええやんか」

「それが、どっかいっちゃってね…先生が持ってちゃったのかな」

「…あっそ」

「御堂筋くん委員会来るの初めて、だよね?今日はどうして?」

「今日行かなかったら部活禁止て言われたんや。せやからさっさと終わらせて部活行きたいんやけど」

「あー話はなんとなく聞いてたけど、部活禁止は痛いね…えっと何部だったっけ」

「…自転車部や」

「っ!そっか!じゃあ早く終わらせなきゃね!んーと、これ全部棚に入れたら終わりだから分担しよう」

「…君ィ一人なんか」

「あっうん、なんか委員会サボるの御堂筋くんだけじゃなくて結構いるんだよね…。でも今日は私だけだけど、いつもはもうちょっといるよ!」

「ふうん」


返却済みと書かれた札が下がってる荷台にこんもりと本が積まれている。上の方の棚には本が入れられないのにもかかわらず、これをこいつ一人で片付けるとなると日が暮れてしまいそうや。図書室を見渡すと先生の姿は見当たらない。ここで帰ってもバレないんとちゃうかとも思ったけど、もくもくと作業を再開するこいつを見とったら手伝うてやってもええかと思った。今いないだけで先生が来てサボったんがバレるんも困るし。何より考えとるより手を動かした方がええと思って本を一冊手に取った。




「御堂筋くん!」

「…この前の」

「あっ、えとみょうじなまえって言います」

「なんの用や、みょうじさん」

「うーんとね、これ」

「何なん」

「委員会のプリント」

「なんでみょうじさんがくれるん。僕のクラスにももう一人図書委員おるやろ」

「あーそれがね…」


小声で「御堂筋くん怖いから代わりにお願いって頼まれたんだ」と言われる。ほんまにあみょうじの女子は使えん奴やと再確認したところで、みょうじさんは用が済むとそそくさと自分のクラスに戻っていってしまった。受け取ったプリントを見ると、次も来てねって先生が言ってたよと丸こい字で書かれていた。前も結局先生来いへんかったし、どうせ次もいないんやろなと思ったけど、また静かな図書室で一人で作業するみょうじさんを想像するとため息が出た。

それからというもの、僕の視界の中にちらちらとみょうじさんが入り込むようになった。委員会の時には毎回、プリントやらなんやらで週1程度。あの小さいみょうじさんが僕の視界に映る。それ以外の時も廊下を歩いとるみょうじさんを見かけたり、クラスの奴とザク以外で初めての存在だったように思う。まあ、所詮知ってる奴だからということには変わりない。

(みょうじさんや)

せやけど、またみょうじさん見かけたと思たら今日は廊下歩いとるだけとはちゃうみたいやった。

「なんやの、あれ」

誰と話しとるかと思うたら石垣クゥンやんか。にこにこにこにこ、僕にはあんなに笑わんくせに。話しとる内容は流石に聞こえんけど、それが視界に入ると胸のあたりが妙にざわつく。なぜだか気にくわんと思った。けど、今まで自転車のことにやけに食いつくと思うたら、こういうことやったんかと思った。

「みょうじさん」

「あれっ…御堂筋くん?」

「ん?御堂筋、…くんやん。どないした?」

「…………」

ザクもこいつも、近づくとより楽しそうに話しとるんが分かった。それと同時に僕もむかむかしてきよる。いざ目の前に立つと僕の手は自然とみょうじさんの手首を掴んで引っ張っていた。みょうじさんも石垣クゥンも訳分からん顔しとるし、僕も実際なんでこないなことをしとるんか訳分からん。ただみょうじさんが石垣クゥンに向けてる笑顔を見るとほんまにむかついただけや。
そのままみょうじさんを引っ張って石垣クゥンが見えなくなるくらいのところまで来て、ようやく僕のむかつきも薄れてきたからぱっと手を離す。


「御堂筋くん、い、いきなりどうしたの?」

「…みょうじさんは石垣クゥンと付き合うとるん?」

「え?石垣先輩?」

「早う言え」

心の中で違えと僕は言った。

「つ、付き合ってないよ!」

「…じゃあ気ィでもあるんか」

「石垣先輩は委員会の先輩だよ?別に気もないし…」

「ふうん」

「御堂筋くん?」


なんでみょうじさんの言ったことでほっとしたのかよう分からん。大体みょうじさんが僕の視界に映るようになってから分からんことだらけなんや。なんでみょうじさんのことを見かけただけで目で追うのかも分からんし、ほんまどうにかせえと言いたいくらいや。
終始頭の上にはてなマーク浮かべとるみょうじさん。とりあえず、僕の気は晴れたから教室戻ろ。

今思えば、これが人を好きになった瞬間やった。



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