改めて見ると、本当にきれいな顔をしている。尽八をこんな風に下から見るのは初めてだけど、そう思った。

「…いいのか、なまえ。やめるなら今のうちだ」

「う、うん、大丈夫」

「本当か…?」

今から始まることが単純に想像もつかなくて、そこまで緊張してはいなかった。何度も大丈夫か聞いてくる尽八こそ緊張している。そうやって間を空けられる方がだんだん緊張してためらってしまうかもしれないから早く、なんてはしたないのかもしれないけれど、尽八と目を合わせ続けるのも恥ずかしくなってくるし、早くなるようになれと思った。

「途中でやめろなんて言ってもやめてやれんからな」

「うん」


すまんね。
それを皮切りにおでこに軽くキスをされてから恐る恐る私のシャツを脱がせ始めた。謝らなくてもいいのに。そんな風に謝られたら、これからすごく痛い思いをするんだって思ってしまう。話に聞くだけで本当はそうじゃないって思いたいから、そんなこと言わないでほしい。そう思いながら私も尽八のシャツに手を伸ばした。
尽八はあんなにモテるくせにはじめてだからなのか、ボタンを外す手が心なしか震えていた。でも、私だって震えていた。自分でも面白いくらいがちがち震えてて人のことなんて言えない。あまりにもたどたどしかったので、尽八にやんわりと手を退けられた。人の服なんて脱がせたことなんてないし、やっぱりこうやって冷静に考えてても緊張しているんだと実感する。そんな自分が情けなくなってきてぎゅっと目をつぶると唇を塞がれた。

「んっ、じん、ぱちっ…」

「はっ、…ん」

口を割られてちゅる、と舌が入ってくる。いつもの触れるだけの軽いやつじゃなくて、息も絡め取られていくみたいだった。いつ息継ぎしていいかも分からなくて苦しかった。でも、尽八はやめてくれない。うっすらと目を開けてみると、さっきまでの尽八はいつもと同じだったのに、こんな目してたっけ。ぎらぎらとした目で私を見つめていた。それが急に怖くなってまた目をつぶると、それを拒むように根本から舌を絡め取られた。

「ひゃ、っあ…ちょ、ちょっ、と、あっ」

「なまえ、」

「っや、あっ…ん」

「なまえ、なまえ」

キスに気を取られて、いつの間にかブラジャーはずり上げられやわやわと触られていた。それでもまだひかえめで、やさしい。やっと唇が離れたと思ったら頬から首へたくさんキスをされながらどんどん下がっていって、最後には胸をかぷりと噛みつかれた。思わず声を上げると、それがうれしいのか何回も何回も尽八は私の名前を呼んだ。それに応えてあげたいけど、そんな余裕も残ってない。息をするので精一杯だ。はあ、と漏れる吐息にすらびくびくと反応してしまう。それから、さっきから膝にかたいものが押し付けられるようにして当たっていて、それを想像すると頭が破裂してしまいそうだ。

「んっ、っはあ、…」

「ぁっ、う…っふ、」

「だいじょうぶ、か」

本当は大丈夫じゃない。もう恥ずかしい気持ちと怖い気持ちがごっちゃになって訳が分からないよ。でも、こんなに純粋に求められているのに拒むことの方が到底できなかった。そんなこともお見通しなのか私が態度で表してたのか知らないけど、こうやって一旦少し止まって聞いてくるところがやさしすぎるんだ。髪を撫でてなだめられて、ここにいるのが尽八でよかったと心底思う。

「いれる、ぞ」

うわあ、変な感じがする。尽八の指だ。尽八の指が中に入ってきて、ぞわぞわ、奥の方に入っていって、そこはもうぐしゃぐしゃだったからかそこまで痛くはなかった。動かされるたびにくちゅくちゅ音がして顔が一気に熱くなる。尽八以外誰も見てないのに、彼だけに見られているからはずかしくて、もう涙が出そう。いや、もうすでに汗だか涙だか分からないのが目尻からすうっと垂れていた。頭を抱えられながら今度はいつものキスをたくさんされる。なにかにすがっていたくて尽八の背中に手を回してぎゅうぎゅうに抱きしめてやった。そうすると、より硬いものが押し付けられているのが分かって、指を出し入れされて、今度はすりすりと内側の太ももに押し付けられた。

「っん、ぅ、っはあ」

「ちゅ、っん、なまえ」

「じん、ぱち、もっ、いいっ…よ」

私だけ気持ちよくさせてもらってるのがなんだか申し訳ないんだ。尽八だって気持ちよくなりたいのをずっと我慢して、余裕もない顔で初めての私のためにやさしくしてくれて、だから、ちょっと怖いけどだいじょうぶ。
私が頬にキスをすると、尽八は中途半端に脱いでいた服を一気に脱ぎ捨てた。今更だけど面と向かって直視するのはまだはずかしくて顔を逸らせていたが、顎をつかまれて、目を逸らすなとでも言うように舌を入れられて意識を持って行かれる。

「んっ、っく、ぁ…」

「っい…!っ、いた…」

「も、っちょっと、だ」

「んっ、はぁ…、っ、ぃ」

唇を噛んで必死に我慢、してるけどいたい。痛すぎてつい尽八の背中に思いきり爪を立ててしまったから、たぶん痕が残ってしまうだろうな。息もたえだえになって、割かれていくように尽八のものを入れられて、最初からそんなの入るわけなんかないのに無理矢理に奥に進められていく。途中で指を出し入れされていたときに気持ち良かったところが擦れたけど、そんなのまだまだ全然。息を吐いて、吸って、それすら大変なのに。

「っぜんぶ入ったぞ」

「ほんと…?」

だけど、必死に耐えて、途中でもう嫌だなんて言わなくてよかったと思った。まだじんじんと痛むけど、それを聞いたら尽八の形を確かめるようにしてきゅう、と締めつけてしまった。私を気遣ってか、まだ動こうとしない尽八は耳をはむはむと噛んだりしながら荒い息遣いをしていて、もう限界なんだと思う。汗ではりついた髪を耳にかけてやって、今度は私が目を合わせてやった。もうここまでくると言葉なんて必要なくなってくる。

「ぁ、っ、なまえ、」

「んっ、あっ、あう」

「なまえ、っく、んっあ」

「あっ、あ、んっ」

眉間に皺がよっていて、大分余裕のない顔。はたして、こんな顔は今まで見たことあっただろうか。ゆるゆると腰を動かし始めて、さらになにか耐えるようにして、私の名前を耳元で呼ぶからくすぐったくて鈍い痛みも大分紛れてきた。ぎしぎしとベットの音がうるさいくらい鳴る。

「なまえっ」

程なくして頭を抱き寄せられてどくんと中に熱いものが出たのがじんわり伝わる。それが嬉しいのか、気持ちがいいのか分からないけどもうくたくたで、まだ息が荒い尽八に唇を寄せられてそこから意識がまどろんで覚えてないけど、すごく幸せだったって思うんだ。



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