冬は体中が冷えて仕方ない。体は我慢するにしても、手と足だけは凍るように寒いのだけは耐えがたい。だから、冬になると部室にある小さなストーブの前を俺が占領して田所っちに呆れられる。練習が終わって外に出るとため息も白かった。

「ぎゃあ!」

「かわいくねェショ」

「今のはしょうがないよ!不意打ちはよくない!」

あとは子供体温のなまえであったまる。
最近はめっぽう寒くなってきて俺の手先も感覚がなくなってきたから、なまえの首裏に手をつけて体温を奪い取る。すると、かわいくねェ声でびくっと跳ねた。そのまま頬にぺたぺたと冷たくなった俺の手を押し付けると、なんとも言えない顔で嫌がるもんだからやめられないっショ。

「っひい、つめたい!」

「あったけェな」

「わたしは寒くなるだけなんだけどな!」

「なまえはすぐあったかくなるからいいショ」

「…っ、ん」

だんだんと色を含んだ声になってきて、相変わらず手は冷てえままだけどこっちが火照ってくるだろうが。寒いせいで頬は赤いし、じとっと俺を見上げてくるし、なんだこいつ。わざとなのか。しかし、冬になると毎日やっていることなので抵抗してこないなまえに存分に甘えることにする。

「そんなに巻島は私の体温を奪ってくのが好きなんだね…」

「まあな」

「素直に答えないでよ」

「それが一番手っ取り早いってことだ」

「もっと他にあるよね!カイロとか、あったかい飲み物とか!」

「うるせえショ」

カイロなんてとっくに持ってんだよ。必死に反論してくるけど、なんにもわかってねえ。ぎゃあぎゃあと騒いでいるのを適当になだめつつ、手とかからも熱を吸収していたら、さすがになまえも冷たくなってきたのでほどほどにしないとなと思った。

「まあ、こんなにされたら慣れてきたけど」

「俺は冷え性だからなァ」

「それで違ったらビックリするけどね」

「ん」

「………?」

「ポケットの中はあったまってるショ」

そういえばと思い、今日も持って来ていたポケットの中にあるカイロの存在を思い出して、ポケットを広げて見せるとなまえは首をかしげたが、中のカイロが見えるとむっとした表情になった。

「私であったまる必要…」

「あァ?」

「…………」

「ほら」

「それじゃあ、失礼します…」

あんなに威勢がよかったのになまえの手はたどたどしく俺のポケットに入ってくる。俺よりもずっと小さくてやわらかくてあったかい手だ。たまらず俺は指を絡めて暖を取った。

(ぎゅって!ぎゅってされてる!)

「どうかしたか?」

「なんでもないです…」

この季節もまあまあ悪くねェっショ。



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