いつもと何一つ変わらない登校中である。おれはあくびを噛み殺しつつ、ぼんやりと昨日も一昨日も会った忍足のことを考えていた。忍足。それはおれにとってすごく大事な人の名字で、下の名前は侑士と言う。忍足侑士。簡単に言えばおれの恋人である。しかしながら彼は従兄弟やら友人やらに好かれていることをおれはよく知っている。あんまりにも楽しそうに喋ってたりするもんだから多少なりともイラッとするというかジェラシーみたいなものを感じている訳で、はてどうしたもんかと考え中。久しぶりというかおれの人生の中でふらふらせずに登校出来てる日ってあったかな。すげぇなジェラシーって。おれの頭覚醒させれるんだもんな。

(…あー…、ムショーに忍足に会いたくなって来たかも…ってこれから会えるんだけどな。学校だし)

やけに豪奢な校舎がおれのこれから歩く道程の向こうに見え始める。と同時に登校中の生徒達もやっと視界に入り、おれはそこでやっと自分の数歩前を歩いているのがおれの頭ん中を占める忍足だってことに気が付いた。何だすぐ近くにいるんじゃんか。それならそうって早く言ってくれれば良かったのに。抑えきれない感情を声に乗せ、大きな声で名を呼ぶと忍足はくるりと振り返る。登校中も本を読んでるとか大丈夫なのかよ。フツーはそんなことすると転ぶって。忍足はいつもみたいにやんわりと微笑んで「おはようじろちゃん」なんて言ってくれたので、おれの頬はちょっとだけ熱くなった。恥ずかしかったけどやっぱり嬉しかったので、照れ隠しでするりと忍足に近付くと触れるだけの軽い口付けを送った。




制御機能が行方不明
(これおれのだかんな!手出したら返り討ちにしてやるんだからな!っていう意味でキスしたんだって気付いてんのかな?気付いてないよな、多分)

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