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☆ だんらん

臨→静←幽
side:静雄



普段なら手足となるガードレールに腰を預けて柑橘色の携帯で時間を確認し
待ち合わせの時間よりも大分早い時間を示す時計を見
肺の空気を外へ吐き出した。

久々に休みを取れた幽が、二人で出掛けようと数日前に連絡をくれた日から
今日が楽しみで仕方なく指折り日数を数えていた…。

兄弟水入らずで過ごすのも何ヵ月ぶりだもんな…
向こうの方が稼ぎが良いが兄のプライドとして
いつもより膨らんだ財布にどうだ、なんて威張ってみる。

通り行く人の群れを見てこの国は平和だと感じつつ
何時もの銘柄のタバコを出しそのフィルターを噛んでライターを使い火をつける。
肺に充満する紫煙…基タールやニコチンに満足しふぅと緩慢な動作で吐き出す

何処か遠くで聞こえる馴染んだ嘶きが耳に入って来
クスと喉の奥で笑うと見た事のある学生三人や寿司屋の客引きの声が混る。
ありきたりな風景は少しの退屈を基盤にしてその上に、楽しみを作った…。

「兄さん、灰が危ない…」

急に声を掛けられて視界に幽の姿を捕らえた後
自分が咥えたタバコを見るとジリリと燃やされた灰が崩れずに状態を保って居た…

危ないと思う前に携帯灰皿を空いた状態でズイッと目の前に出された。

「悪ぃな、迷惑かけててか、久しぶりだな…幽。」

羽島 幽平では無く
平和島 幽を見つめて言うと口許だけで笑った弟が

「迷惑なんて思った事無い」

逢いたかった、兄さん…と俺の服の裾をそっと掴んだ。
まるで子供の様な仕草にその艶やかな黒髪を撫でると
パチリと睫毛を上下させまあるい瞳で俺を見上げた幽

「子供扱い、しないで」

「立派な芸能人だもんなぁ?」

「違う、兄さんと居る時の俺は平和島 幽以外何でもない。芸能界なんか関係ない」

俺は弟なんだから他人扱いも止めて、兄さん
俺の裾を握る手に、手を重ね凭れて居ても背の低い弟にごめんな、と小さく謝った…。
他人扱いはしたつもりは無い
だが、幽がそう感じたのなら俺は、そう扱ったのかも。
見た目だけ成長した幽の手をくい…と軽く引いた。

「飯、食いに行こうか」

コクンと頷いた頭を見てニッと笑って、体を立たせる

「何が食べたい、幽ぁ?」

ばっと顔を上げた幽を見て余程、腹空いてんのと思うと軽く表情を和らげた弟は

「兄さんの手料理が食べたい」

と、可愛らしく言った。
自炊など出来なくは無いが家飯とか、なんか期待外れ…
幽さえソレで良いならウチの財政的にも凄く助かる

「スーパー行こ」

「ちょ、良いのかよ…幽ッ!」

「なんで?」

「なんでって言っても…」

久し振りなんだからよぉ美味いモンを食わしてぇだろ
日常的に幽が食って居ても食事は相手が変わるだけでも感じ方が変わるだろ…。

「やだ、手料理が良い」

むくれた幽が俺の手を引き小さなスーパーへと入った…
まぁ、こんな休日も悪くない
幽と一日中語り明かして兄弟の絆を深めるのも良い。
と、思ってると…

「鍋すんの、シズちゃん?」

俺も参加してあげるよ!鬱陶しい声が聞こえて来て
ふと首を横を向けると腕にしがみついている、臨也

「…ぃいいいざぁぁっ!?」

「スーパーでは静かにね!」

ぷにりと臨也の人差し指が俺の唇を押さえつけた
きゃっ…、とか言いつつ然り気無くカートを用意し俺を引き摺った、臨也は

「買い物デートなんて新婚さんみたいで楽しいね!」

しゃぶしゃぶにしよう!手間かかんないし俺が好き!
と、一人で喋って居る…

「放せバカ、死ねっ!」

腕を振りほどこうにもがっちりと俺をホールドし笑顔で高級な肉を選ぶ、臨也

「俺が支払うよ、だって大黒柱だもんっ!」

嗚呼、駄目だコイツ…
なんて現実逃避していると俺と臨也の間に入った、幽が

「貴方は一人鍋して下さい俺と兄さんは楽しく二人で同じ鍋をつつきますので…。
因みに、豆乳鍋しか認めない」

豆乳鍋のスープを持って俺を臨也から離した、が
あの臨也が油断する訳なくて今度は俺の腰を抱いた…
気持ち悪いから止めろ、バカ

「お兄さんの彼氏に対してその態度は可笑しいんじゃない君は、キムチ鍋で充分だよ」

「男の兄に彼氏は要りません今すぐに消えてください貴方こそキムチ鍋で充分です」

「愛は性別を越えるんだよ?固定観念で出来てる弟君には理解が出来ないかもね
てか、豆乳臭くなるよソレ」

「兄には、俺が居るので貴方なんか必要ありません生活習慣病になりますよソレ」

高級肉と豆乳スープを持った大の大人、しかも男が家族の憩いの場でもあるスーパーで
口論を繰り広げ痛い視線を受ける中で俺はゆっくりと空気を吸って

「うるせぇぇぇぇ!!」

一言叫んで、二人をいなしその手から肉とスープをとりあった場所へと返しておく

「鍋は、ちゃんこで決定肉は安くても構わねぇんだよ
あと支払いは、臨也なカートは悪ぃが幽に頼むわ」

しらたきを忘れない内にカートの中に投げ入れると
フリーになった臨也が俺の腕に、抱き着いて来た…

「臨也くんよぉ鍋に混ぜてやんだから大人しく俺から離れやがれ」

「絶対、嫌☆…ってか痛いし」

「兄さんから離れて下さい」

カートで臨也を轢いた幽は尚もソレを押し付けている…
地味に痛いだろうが相手は臨也だからな、平気だ

厄介な二人を連れながら食品コーナーで試食しつつ晩餐会の準備をした…

「お肉いっぱい買おう!」

「お前、肉しか食わない気か?」

「兄さん、白菜も…」

「幽は良い子だな、野菜を食べると体に良いぞ」

「俺も、野菜食べるよ!」

「あー…はいはい、良い子な」

「シズちゃん、ラ…痛ッ!!」



















「臨也、お前こぼし過ぎ…」

「しらたき食べ辛いよー」

「……………」 黙々

「嗚呼もう貸せ、口開けろよ」

「食べさせてくれるの?」

「……………」 黙々

「ほら、あーん…」

「あー…熱ッ!!」

「豆腐も美味しいでしょう?」

「危ないだろ、幽っ」

「火傷したじゃん、最悪」

「ノミ蟲さんの事を考えて豆腐をチョイスしたんだけど迷惑になったかな…」

「そんな事無いからな、幽っお前って本当、良い子だ!お兄ちゃん嬉しい、感動した」

「はん、猫被りが…」

「黙れ、害虫」





TROPICAL MERMAIDの水色様から頂いた素敵相互記念小説ですっ^^!
幽と臨也のシズちゃんの取り合いがもう最高です><!
素敵な小説ありがとうございました^^これからもよろしくお願いします^^
行間など変わっていしまい申し訳ありません><





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