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その頃千影が去った部屋で静雄は一人考えていた。

(恋…?俺が、誰にだって?)

ノミ虫の顔が脳裏に浮かんだ。

(そんなハズ、ねぇ)

自分に言い聞かせるように否定する。



そもそも静雄は恋と呼べるような恋をしたことがなかった。
小学生の頃、自分に牛乳をくれたパン屋の女。
今思えばそれが初恋だったのかもしれないが…、その後自分がしてしまったことを思い出して自己嫌悪に陥る。


(そうだ、俺は誰かを傷つけることしかできねぇんだ…。今更、誰かを好きになるなんて、たとえそれがあの大嫌いな筈のノミ虫であっても、許されるわけねぇ。)


今はまったく力のはいらない拳を握りしめ、頭からアイツの顔を振り払った。


(そもそもなんで、こんな弱くなっちまったんだろう)



ばんっ!!


!?


戸締りしたはずの扉が勝手に大きな音をたてて開いた。

何事かと思い扉のほうを見てみれば、そこには静雄が今もっとも会うことを躊躇っていた相手、折原臨也が居た。


「っなんで、てめぇがここに」

「なんでだろうね。」


そう言った臨也の声はいつもの軽い感じのものではなく、冷たい、静雄にとってはじめて聞く声だった。

(なんだ?)

静雄は少なからず違和感を覚えた。
が、臨也はそのまま近づいてくる。

するといきなり、全力で静雄を殴り飛ばした。

「っ!?」

わけがわからず殴り飛ばされる。

「…いきなりなにしやがる」

「へぇー、ほんとに弱くなっちゃったんだ」

「っ!」

「じゃあ俺がこんな絶好のチャンスを逃すわけにいかないよね」

どうやら一番知られたくない奴に知られてしまったようだ。
だが何故それで臨也が怒っているのか、理解できない。普通なら喜ぶところだとゆうのに。



「てめぇになんかやられてたま

っ!」

臨也からみぞおちに重い一発をくらい意識が軽く遠のく。
そんな静雄を半ば強引に寝室までつれていき、ベットの上に乱暴に放り投げる。

「ねぇ、俺なんで怒ってるのかわかる?」

「わかるわけねぇ、だろ。」
朦朧とする意識なか答える。

「俺もさ、わかんないんだ。」

そのまま静雄を押し倒し、噛みつくようにキスをする。

「んんっ!」

唇を離すと臨也は今まで聞いたことがないような冷たい声で言った。
「俺以外の奴に殺されるなんて許さない。」

それだけゆうと静雄の邪魔なシャツをはぎ取ってゆく。

そして両腕を押さえつけると肩の先ほどの乱闘でできたであろう鬱血した痣に思い切り噛み付いた。
「いっ…!」

「痛い?でもいいよね。シズちゃんは痛いのが気持ちいいんでしょ?」

臨也は自分の中のドス黒い感情が沸き上がってくるのを感じていた。
未遂に終わったとはいえあのチンピラがこの肌に触れたかと思うと、
六条千景がこの部屋に居たかと思うと、

自分の感情が抑えられない。
目の前のこの男をめちゃめちゃにしてやりたい。






お、乙女…(^P^)!?



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