( 2/12 )
「まさかあのBuster Brosの山田一郎に推される日が来るとは」
友達の付き合いで来たとか、そんな様子じゃなかった。ガチ勢だった。ただの私ガチ勢だった。
歌い始めれば黄色い歓声に混ざって、山田一郎の感極まった雄叫びのような声が聞こえてきた。
私の名前が入った手作り団扇を掲げていた。ペンラを振る熱量は他のファンに勝るとも劣らない。コール&レスポンスも完璧だった。
アンコール、最後の曲が終わった頃には号泣していた。気のせいで無ければ、「尊い…」と私を拝む声が聞こえて来た。
本来なら私も号泣していたんだろうけど、山田一郎の衝撃が大き過ぎてそれどころじゃなくなっていた。
周りの女の子達も、集中出来ない様子で山田一郎の様子を伺っていた。
「草しか生えない案件なんですけど」
こうして私の初ライブは幕を下ろしたのである。
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