( 1/12 )


今日は私の初ライブである。

今でも信じられなかったりする。まさか、私が、ライブなんて。

元を辿れば某動画サイトの歌い手だった私。歌には自信あった。でもプロの歌手になんてなれる訳ないと思い込んでいて、それでも誰かに歌を聴いて欲しくて投稿したのが始まり。最初こそ再生数100も行けば喜んでいたのが、徐々に1000、10000と動画を上げるたびに伸びていって。気がつけばランキング上位の常連、動画サイトの主催するイベントへの参加、からのスカウトで正式に歌手として活動することになったのだ。
更にはデビュー曲が人気アニメの主題歌に大抜擢。ラップが主流の世の中にしては売上も好調で、華々しい出だしとなった。

が、初ライブ当日。
ざわめくスタッフの姿に、何かトラブルでもあったのかと不安になった。今まで順風満帆だったツケが、とうとう来てしまったのかと。
「何かあったんですか?」
「いや…トラブルという程ではないのですが」
変に口を濁すのはやめて欲しい。
「でもライブにはなんら支障はないと思いますのでよろしくお願いします!」
そう言ってステージに送り出された私。
そこまで大きくはない、観客全体が見渡せる規模のステージ。
私のファンは女の子が抱いた大多数で、私が出ると黄色い歓声が上がって鳥肌が立った。特に問題など無いように思える。何だったというのか。

流れるイントロをバックにひと息ついて順に客席を見回せば、女の子集まりの中で頭一つ抜きん出たシルエットが目に入った。
背が高いだけじゃない。ガタイもいい。男子。めちゃくちゃ目立ってる。


「Buster Brosの山田一郎がいるなら先に言って!?」

歌い出しでいきなりつまづくところだったよ。

PREV |NEXT


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -