愛にお眠り



トムさんの前戯は長い。非常に唐突で申し訳無いが、今現在の俺のたった一つの悩みである。
まぁ一口に長いと言っても色々ある訳で、どれぐらい長いかと問われればそうだなぁ、借りて来た洋画のDVDを一本分見終わってしまうぐらいには長い。
あまりにもじれったくてしつこい愛撫に、何度も早くいれて、と言ってしまいたい衝動に駆られるのだが、実際問題俺もそのじれったい前戯が好き過ぎてやまないので言いだせずにいるのだ。
もしかしたら早くと促した状況は何度かあったかもしれないが俺は生憎都合の悪い事は忘れる性分でな、申し訳無い。
そして今も、現在進行形でそのとてつもなく長く感じる前戯に勤しまれているわけだが。
俺は早くも気が狂いそうだった。トムさんは、身体を繋げる数が増す毎にセックスがどんどん上手くなって行ってる気がする。
やれどこが感じるだの、やれどこが気持ちいいだのを事細かく聞いてきて、セックスをする度に何かポイントを再確認しているようだった。
ごめんなさいとむさん。おれもうきもちよすぎて、ばくはつしそうです。

「ゃ、や、と、むさ‥ッ、も、やだッ…!」
「んー…?なんだ静雄、まだ1時間ちょいしか経ってねェべよ。まだいけるべ?」

俺をベッドに張り付けるように組み敷き、邪魔なドレッドの髪を後ろに束ねて俺を見下ろすトムさん。
眼鏡はとっくの昔にどこかに投げやられていて、未だ飽きる事なく俺の太腿をべろべろと舐めまわしている。
頭の中は早くイっちまいたいという言葉で一杯なのに、トムさんはそれを許してくれない。
まだ満足していない、これからだろ、と太腿の内側を付根からつぅ、と舌を這わせられれば、俺の身体はビクビクと震えあがった。
気を緩めてしまえば達してしまいそうな程の快楽に、思わずぎゅっと目を瞑る。嗚呼、ずっとトムさんを見ていたいのに。

「とむさ、あッ…、も、ほんと、イっちまいます‥ッ、、」
「だーめ。ほんと美味ェなあ?静雄のふ、と、も、も、は。ヒヒッ」
「‥く、ぅン…!…今日のとむさ、すげぇ、いじ、わるっ…す!」

恥を掻き捨ててイかせて。とお願いしているのにも関わらず、トムさんは意地の悪い笑みを浮かべながら延々と太腿を嬲っている。
出来ればお許しを得てから盛大にぶっ放したいのだ。だってそっちの方が何倍も気持イイ。
けれど今日は何が何でも最後までイかせない気らしい。俺の精液タンクはすでにパンパンだ。むしろ溢れそう。
尿道はパクパクと今にも白い何かを吹き出しそうなほど蠢いている。
…あ、もう、駄目。もう出る。我慢できねェ。

「、、‥ン…ーぅッ、ぁ、あっ‥!」
「おい、静雄…?」
「はぁ…ッ、はぁ‥あー…すいません‥、…我慢、できませんでした‥」

一瞬頭が真っ白になって、断続的に精液が勢いなく飛んだ。
勢いがないのはあれだ、なるべく出したくなくて我慢してたんだけど出ちまったからだ。これでも出ないようにチンポの穴締めてたんだよ悪ィかこの野郎!
出した後の解放感に、身体をぶるぶるっと震わせた。小便を出した時の感覚と同じかもしんねぇ。1時間も出すの我慢してたから超気持ちイイぜ。
「出ちまったもんはしょうがないよな、ごめんな静雄」と、トムさんは俺の頭をひと撫でしてからゆっくりと俺のペニスを舐めた。
ちょっ、まっ、汚いっす止めて下さい!だがしかし何と哀れな事に、俺の声は届かず、トムさんはひとしきりペニスを堪能した後、俺の尻の後部に指を這わせたのだった。
中指でぐにぐにと穴を解してから、つぷりと一本挿入される。
さっき出した精液のせいでべとべとだったので、案外すんなりと入った。トムさんの指、好きだ…。
トムさんの指が出て行かないようにと、全力でケツの穴を締めると「そんなに締めたら動かせねぇよ」と笑われた。
だって好きなんだからしょうがねぇだろ…。二本目、三本目と指を増やされて横とか縦とか前後とかくちゅくちゅと内部を刺激されれば、俺のチンポは再びガチガチに勃起した。

「…静雄、イイか…?」
「とァ、む…さ、も、だめ、いれて、おねが、いれてッ!あっあっ出る出るッマジ出そうなんでおねがいしますッ…!」
「涎垂れてんぞ静雄。そんなにお願いしたらトムさんも断れねェよなぁ?はいはい、トムさんが入ってくっぞ〜力抜けー」
「うあ、あ、あ…−‥ッ!」

グチュッ、と音を立てて指を引き抜かれれば、笑いながらトムさんが中に入ってきた。
笑ってて余裕そうだけど、眉間に皺寄ってっし、すげー顔ひきつってら。でも気持ちよさそう。嬉しい。俺も凄ぇ気持ちいいよトムさん。
再びトムさんは意地の悪そうな顔で、俺の内部をズコズコと腰をピストンさせて刺激した。
あまりの展開の早さについていけず、口元がだらしなくなる。
口の端からはピストンされる度に唾液がつぅ、たらり、と零れおちて俺は夢中になってトムさんに抱きついて腕にぎゅっと力を入れた。

「おら、ココだろ、此処好きだろ、静雄、ん?またすぐイっちまうのか?静雄」
「ぃあッ、ひっ、ン、アッ、やだ、やめッ、そこだめッ、ひんッ!」
「…ッ、し、ずおッ‥、なんかッ、今のキたわ…ッ、あー静雄ッ、一緒にイくぞ‥ッ」
「ふぁッ、もうだめ!ンッ、ン‥ッ、でる、で‥るッアアァ…−!」
「ク…ッ!」

今日一番の快感が全身を駆け抜けて、ドピューッと俺は大量に精液をぶちまけた。
それと同じく、自分の腹の中が温かくなって、トムさんも一緒にイってくれたんだと悟った。
最後の余裕無かったトムさん、かわいかったな…でもなにがキたんだろ…わかんね…つか、ね、みィ…。
何だろうか今日の、この今までにない程の満足感と幸福感。
幸せすぎた俺は、どうやらこのままホワイトアウトしてしまったようだった。



「お疲れ様静雄、今日は頑張ったもんな。そりゃ出したら眠くなるわ」
「…ん、むにゅ‥」

一緒にイっちまった瞬間、そのままことりと眠りに落ちてしまった静雄の身体を綺麗に拭いてから、俺は静雄の隣にゴロリと寝そべった。
いやーそれにしてもまいった。ひんってなんだひんって。それだけで俺はすぐ出しちまった。
こいつの色気は無自覚だから恐ろしいってもんだぜ。
奴の新たな魅力に気づいてしまった、いや快楽に新たなる扉を開いてしまった俺は、愛する静雄の頭を優しく撫ぜながら、その可愛い寝顔を心行くまで堪能するのであった。

(俺にいーっぱい愛されて、溺れてしまいなさいよ。そしてゆっくり此処でおやすみなさい、静雄)


end.

since*2010.04.27 なか 「ひん」企画参加出来てうれしいですあうあう。
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