どうしようもなく好きだから






突然だが俺は田中トムという人間が好きだ。大好きだ。愛している。
どれぐらい好きかというと表わしきれない物があるが、とにかくそれはかとなく好きだ。そもそもどの辺にスイッチがあったのかは分からないが、トムさんの前から消えるのに大変苦労した。なんかこう、ムラッ、と来たのだ。ムラッ、と。本当に自分のスイッチが分かんねェ。
もしかしたらあのフワッとなびくドレッドだったかもしれないし、もしかしたらあの黒斑眼鏡だったかもしれないし、もしかしたらあのビシッと決まったスーツ姿だったかもしれないし、あるいは煙草を吸う時のあのオーラだったかもしれない。

とにかく俺は、現在進行形でえらい目にあっている。


「……ッんだ、これ‥ッ」


自分の分身が酷く熱を持ちずくずくと疼いて仕方無い。『帰っていいぞ』のお言葉を頂き即効でひと気の無い路地裏に逃げ込んだが、これはやばい。まずい。
ハァ、ハァ、と抑えきれない呼吸を乱しながら辺りを見回す。幸いもう夜遅い、深夜である。眠らない街とは言えこの時間になるとさすがに人もまばらになる。この路地裏、辺り周辺には誰もいないようだ。
もう一度熱い吐息を吐きだしてから俯き気味だった顔を上げれば目の前には通行止めの標識。頭の中で警報が鳴る。まずい。いけない。でも、止められない…ッ。


「…ァ、……ヤベェ‥、キモチィ…、」


思わず目の前にあった標識の白い棒の部分に縋りつく。そして、体をペタリと密着させ、股間を擦り付ける。自分でもびっくりするぐらい気持ち良くて、腰が勝手に動いた。傍から見たら俺は変態なのかもしれない。いや、変態なんだ。絶対。だって止められない。止まらない。厭らしくくねくねと動く下半身は、留まる所を知らない。
スラックスの前部分が窮屈になってきて、夢中になってチャックを下ろして自身を取り出した。
ぶるん、と飛び出した膨張しきった自身は、驚く程熱くて、先端はしっとりと先走りで濡れていた。俺は片手で自身をきゅっと握り、道路標識にゆっくりと擦り付けた。未だかつてない程に興奮している。


「トムさ‥、トムさ…ッ、おれ…ッ!」


棒部分にしがみ付いた腕に力が籠る。メキョ、と音がして馬鹿力に耐えられなかった道路標識はあっけなく変形した。目の前が白く霞みがかって、ゴールが見える。


「…トムさん‥ッ、すきぃ……ッ、ァアッ、」


無意識に擦り付けるスピードを早くすると、俺はあっという間に吐精した。
全力疾走した後のような息切れ、どっと押し寄せて来た疲れに俺はその場にへたり込む。我に返り残るのは、自分に対する嫌悪感と、トムさんに対する多大な罪悪感であった。








(お願いトムさん、はやくきづいて)








end.




トム←←←静雄的な感じで。まだ両想いじゃないです。両片想いにゲロが出そうなくらい萌えます。

since*2010.04.15 なか
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