自惚れ



「辰馬、ちょっと」

とりあえず二ラウンド終了し、適当なピロートークも終らせた後、いつものシャツに腕を通そうとする辰馬を自分側に呼び寄せる。
こいつはアホの子だからなんの躊躇いもなく近寄ってきて、俺の胸に抱き込まれた。

「うおっ、何じゃ銀時?!離しとーせ!」
「なー辰馬、お前さ、よくみたら意外と胸板厚いのな。ここの筋肉すげー」
「何触っちゅうがか!いつも重い荷物運んでるき、当たり前じゃ」
「へぇ、そういうのって部下の仕事じゃねぇの?」
「社長だからって働いておらんと、部下に信用も信頼もされなくなるきに。肉体労働こそしっかりしたいんじゃ」
「よく出来た社長さんだこと。じゃ、社長さん、俺ともっかい肉体労働でも」
「アッハッハ、泣いていい?」

ぐだぐだ言ってる口をキスで塞ぐ。
装着しようとしていたサングラスを片手で奪い取り、床に放り投げる。
かしゃんと音を立てるサングラスに辰馬が目を奪われている隙に、空いているもう片方の手で辰馬の頭を掻き抱いた。
ぴちゅぴちゅと激しく舌を吸ったり舐めたりして、辰馬がおとなしくなるのを待つ。
おとなしくさせたらこっちの勝ちだ。

なんだかんだ言って、辰馬は俺のディープキスに弱い。
上手いという自信はないけれど、流れをセックスに持っていきたい時は必ずこのキスで辰馬を落とす。
口内を十分に味わった後唇を離すと、銀色の糸が引き目の前にはうっとりと頬を赤らめた辰馬の顔が現れた。

「銀時‥早く触っとーせ」
「ノリノリじゃねぇか、結局よ」
「うるさいのぅ、しばくぞ」
「んなこと言ってると、このまま放置プレイかますぞコノヤロー」
「……ッ」

この、焦った時の辰馬の顔が好きだ。
慌てて謝ろうとするんだけど、素直じゃないからごめんの一言がどうしても言えない。
俺がこのままほっとくと、布団を被って寝たふりしてこっそり泣き出すか、帰るとか言い出すかどちらかだ。
本当に辰馬は子どもっぽい。だけど、こんなとこも全部ひっくるめた坂本辰馬が、俺は好きだ。

「あー、ほら、そんな顔するなよ、言い過ぎたって。泣くな辰馬」
「泣いとらんち!馬鹿者!」
「はいはいっと。んじゃ第三ラウンド行っちゃうけどいいか?ていうか行くけど」
「どうせ拒否権は無いんじゃ、好きにしとーせ」

こうしてまた、俺はこいつの魅力に飲み込まれてゆく。





since*2007.05.31 水沢

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