偏頭痛



そろそろあの時期だなぁと、僕は直感でそう思った。




プトレマイオスでの食事を摂るスペース、つまり食堂。
その中でロックオンは、頭を抱えながら出された食事をフォークで突付いてもて遊んでいた。
明らかにいつもとテンションの違うロックオンに、刹那とティエリアは暇つぶしのおもちゃが出来たとからかっている。

「女にでも殴られたのか」
「変なモノでも拾い喰いしたのですか?」
「お前ら、俺をなんだと思っているんだ…」

刹那とティエリアは、クスクスと面白そうに笑っている。
さらに頭が痛くなったようで、ロックオンは大きな溜息を吐いて前髪をくしゃりと掴む。
僕が傍に近づくと二人はどこかへ退散し、自分が影に覆われた事でロックオンはそっと顔を上げた。
何か言われる前に、僕は彼の前に薬とそれを飲むための水を差し出した。

「え…?」
「煙草、増えるでしょ。偏頭痛始まると」
「ばれてたのか…」
「僕は貴方の恋人ですよ。知らないモノは貴方の過去だけだと思っています」
「アレルヤ…」

彼の横に置いてある、小さめの灰皿にてんこ盛りにされたよく知る銘柄の吸殻。
さらに指には、火のついたままの煙草が挟まれている。
僕が差し出した薬を水でググッと流し込んでしまうと、彼は煙草をもみ消してテーブルへと突っ伏してしまった。
普段僕がいるまえでは、絶対にとらない態度。

「今日はまた一段と酷いですね…」
「こういう時ミッションがあると、本当…過酷だと思うよ…。気分が悪い…吐きそうだ」

辛そうに顔を歪め、額には脂汗が滲み出ている。前髪もぺたりと張り付いていて、顔色の悪さが伺える。
そして突然、宙に浮く体。僕が彼を抱き上げたのだ。
このままここに突っ伏していたって、体に負担をかけるだけだと思ったから。

「アレルヤ…?」
「僕の部屋へ連れて行きます。貴方の部屋に、この状態の貴方を帰すのは嫌だ。少し横になって下さい」
「俺は重いぞ…?」
「重くなんて無いですし、廊下へ出てしまえば重力は無くなります。目を閉じていて下さいね」
「悪いな…」
「悪いと思うなら、一人で我慢しないで下さい」

プシュ、と扉が閉まる。
宣言通り、彼を自室へ連れて行きベッドへ寝かせると、すぐに寝てしまうかと思われたがそうでは無かった。
なんというか、あれだ。甘えてくるのだ。
こういう所が可愛くて仕方ない。僕はすぐに自惚れてしまう。

「枕やだ…お前の膝貸せ」
「こんな膝でよければいくらでも」
「ん…。お前今日はミッション無かったよな…。俺が眠るまでこうしててくれ」
「仰せのままに」

青い顔をして、頑張って眠ってしまおうとするロックオン。
けれど酷い頭痛が邪魔をして、すぐには眠れないようで僕に何度か話しかけてきた。
「お前は持病とか無いのか」、とか「休みの日は何をしている」、等。
頭痛には波があるようで、鋭い痛みが脳を過ぎった時は時折顔を歪めた。
そんな他愛の無い会話はいいから、早く眠ってしまえ。
こんな貴方を見ているのは、こちらも辛いのだから。
薬が効き始めて、うとうとと船を漕ぎ出した彼の目の辺りに掌をかざす。

(目を覚ましたら楽になっているはずですよ、ロックオン)


掌越しにキスをして、僕はそっと彼の前髪を梳いた。



end.

since*2008.02.24

偏頭痛持ちで喫煙者のロックオン捏造話。
刹那とティエリアが友情出演です。

水沢
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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