静雄が欲情する話



その日は何だか静雄の様子が落ち着き無かったと思う。
朝からいつになくそわそわしていて、「静雄」と一言呼んだだけで肩が面白いぐらいにビクリと飛び跳ねた。
しまいにゃ目が合うだけで顔を逸らされる始末。意味が分からない。
これは仕事にならないな、と昼過ぎには無理やり家に帰したのだが、俺が自分の家に帰宅して待っていたものとは。

「あッ、おかえりなさい。飯と風呂、どっちも準備出来てますけどどうしますか」
「…何でお前がいるんだ」

ガチャリとドアを開けて靴を脱ぎながらリビングに入っていくと、静雄が正座して俺を待ち構えていた。
待ち構えていた?何かおかしいな。まぁとにかく、部屋に入った瞬間これまたそわそわして落ち着きのない静雄がちょこんと正座して俺を見上げていたのだ。
開口一番何でお前がいるんだ、とはあまりにも酷かっただろうか。一応恋人同士なんだしいても可笑しくはないよな。
現実、その言葉を吐いた瞬間今にも消えてしまいそうなぐらいシュン、、、と音を立てて落ち込んでいる静雄を見て罪悪感が沸いてきた。
ごめんごめんとその痛んだ金色をぐしゃぐしゃと撫ぜると、静雄は俺のスーツの裾をグイッと引っ張って無理矢理自分の前に座らせた。
静雄も正座、俺も正座。強制的に。しかも向かい合って。変な構図だ。
ずっと何か言いたそうに顔を真っ赤にさせてもだもだしていたので、静雄が口を開きやすいようにお得意の静雄だけに見せてやるスマイルを作る。
すると安心したのか、静雄は若干どもりながらも、あのっ、えっと、と朝から様子が可笑しかった理由を口にした。

「トッ、トムさんッ」
「‥ん?どした」
「……おっ、俺達っ、最後にヤったのいつか覚えてますかッ?!」
「へッ?…あー、そうかそうか、しずおー、お前は欲求不満だったのかぁ。そうかぁ。可愛いなぁよしよし」
「ちょっ、はぐらかさないでくださっ…やめ!」

直訳すると「俺はヤりたくてヤりたくて仕方なかったんです朝から」という事だろうか。なんだこの可愛い生き物は。
朝からずっとムラムラして、仕事とかも手につかなくて、もしかしたら俺の一つ一つの動作にまで欲情してしまったのかもしれないのか。
可愛過ぎる。緩んだ顔が戻せない。目の前の静雄を思わずしっかりと抱きよせて、何度も頬に口付けた。
思い返してみれば、今週はまだ一回もセックスしてなかったかもしれない。
記憶にあるのは先週の半ばぐらい…。その前の日までは二日と置かずセックスしていたのに、俺たちにしては珍しい。
さすがの静雄も痺れを切らしちまったってか。しゃあねェだろ、仕事忙しくて書類とか片付けるのに必死だったんだよ。
こいつがパソコンとやらを覚えてくれれば仕事が分担出来て楽なのかもしれないが、この怪力男にそんな繊細な機械を扱えるとは思えない。
あーなんだ、もう1週間強ぐらいしてねェって事か。そう自覚したら俺もムラムラしてきた。
ていうかこんな可愛らしい静雄を前にして、勃たない男がどこにいるよ。あ、誰にもやらねェよ?俺だけのモンさ、静雄は。

「よしわかった、ヤろう、今すぐヤろう」
「…あのトムさんッ」
「ん?」
「今日は俺、やりたいっていうか、してみたい事があって‥」
「なんだ、珍しいな」
「はい、えっと…えいッ」
「うお!」

珍しい静雄の注文に、静雄が言いだすまで黙っていたらもじもじしていた静雄の腕がそっとこちらへ伸びて来る。
…その矛先は、俺の股間であった。びっくりして変な声出しちまったぜ。
いつの間にか静雄は足を崩して尻を上げていて、じりじりと四つん這いの格好でこちらへ迫ってくる。
股間に這わせている手は、すり、すりっ、とゆっくり刺激を与えている。どうしたもんか。
静雄の表情は完璧に欲情しきっていて、心なしか若干息も荒い。静雄が空いている手でカチャリとサングラスを外して近くのテーブルに置く。
準備は万全のようだ。ベルトのバックルに手をかけ、ゆっくりと前を寛げられる。
ジィーッ、とチャックを開けられ俺の既に高ぶっている自身が飛び出すと、静雄はうっとりとそこに屈みこんで顔を寄せた。まさか。

「…おれきょうは、トムさんをきもちよくさせたいです」
「静雄…?」
「なめさせてください、おねがいします…、」
「あ、嗚呼…、じゃあ頼むよ」
「……ふ、ッ」

はぁ、はぁ、と息を乱しながら静雄はふにゃ、と微笑んで勃起したそれの先端に口を付けた。
まさかのフェラしたい発言に俺は心臓がバクバクいってる。付き合い始めて初めての事だからな。
ここまで静雄を我慢させてしまったのは俺らしいので、しっかりと責任は取るつもりだ。
そんな事を脳内で自分を落ち着かせるように考えていたら、静雄のフェラは開始されたようだった。
まずは先端から、れろ…と舌を這わせて、そのままパクリと先っぽを口に含む。
静雄の口内でちうちうと優しく吸われながら、更にはその口内で舌を巧みにチロチロと動かされて根元をぐっぐっと指で扱かれれば俺の自身はあっという間に完勃した。
なんというか静雄に迫られるのは初めてで、骨の髄まで喰われちまいそうな感覚に俺は堪らず目を細めた。

「‥ふァ、ン…とむさ…、イイ‥れすか、?」
「あぁ‥すげェ気持ちイイよ、静雄」
「ふふ…。おれ、がんばりまふ…、ンッ」

俺が感じている、と気を良くしたのか静雄は思い切って竿全体を口の中に入れてしまった。
初めはゆっくり、次第に激しく。根元の刺激は忘れずに。
室内にはグポグポと静雄の頭が上下する度に卑猥な音が響き渡る。時折漏れるのは静雄のやらしい声。
あぁ、すげェイイ。すぐ出ちまいそう。愛おしそうに俺の自身を頬張る静雄が可愛くて、フェラしている間はずっと頭に手をやりよしよしと撫ぜてやった。

「しずおー…悪い、もうイきそう」
「ほんとれすか?らしていいれすよ、はやく、トムさんの飲ませてくらさい」
「おいッ、咥えながら喋んな、くッ、出すぞッ‥!」
「ン、んーッ…、!」

ドク、と思わず静雄の口に出してしまったが我に返って静雄を見てみると、何とも厭らしい表情でゴクリと喉を鳴らしてそれを飲み干し、濡れた唇を舌舐めずりまでして見せた。
堪らず声をかけるのも忘れて俺はその場に静雄を押し倒す。
一瞬何があったのか分からなかった表情をしていた静雄も、すぐに状況を飲み込んで嬉しそうに俺を見つめていた。
「おいしかったです、トムさんのチンポ、はやく挿れてほしいです」と蕩けた顔の静雄に囁かれれば、俺は一瞬で獣と化した。

(この野郎、天然か、天然で煽ってるのかこの野郎は!)

夜が明ける頃、俺の部屋のダストボックスは、使用済みのコンドームで一杯になった。

end.


静ちゃんはトムさんが欲しくて仕方ないようです。

since*2010.04.16 なか
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