ピロートーク



互いにぶつかり合い欲を吐きだした後、ベッドに横たわったまま俺は静雄を背後から抱きしめた。
自分の首裏からぬっ、と突き出してきて体を抱きしめる俺の腕に、静雄はふにゃりと微笑む。
ベッドが二人分の体重に耐えきれず、ギシリと軋んだ音を立てる。
事が終わってからの静寂の中、その音だけが浮いたように響いてたまらなく恥ずかしい気分になった。

「なんでお前さ、俺にしがみ付いてくんねぇの」
「…え?」

そうなのだ。俺たちは何度か合体済みであるが、まだ一度も正常位の時に静雄に抱きつかれていないのだ。
俺としては盛大に抱きつかれたい。
そりゃぁもう離さんばかりにな!叶いそうで叶わない俺の夢。
こいつの事だから、また難しい事を一人でねちねちと考えているんだろうけれども。

「俺は一生懸命静雄を抱いてるっつーのによ、お前は枕に夢中ってか」
「…や、ちが‥、それは…えっと…」
「何が違うんだよ?…怒らねーから言ってみな?」

後ろから抱きついていても分かる、おどおどと焦った静雄の姿。
安心させるように、後ろから見えるセクシーなうなじに啄ばむように唇を落とす。
この吸いつくような肌は何度触っても、何度抱いても、飽きる事は無い。
静雄が、飽きさせないような行動ばかりしてくれるからだ。
口付けるたびにビクビクと震える体を再びきゅ、と抱きしめると静雄の唇からは申し訳無さそうに、泣きそうに、しがみ付けない理由を呟いた。

「……トムさんを…壊しちまいそうで怖いっす‥」

俺は思わずあっけにとられる。何だよ、今更では無いだろうか。
こいつは自分の馬鹿力がなければいいのに、と思っている節がある。
実際そのせいで今まで散々な目にあってきたらしいが、俺は長所だと思う。
その人間離れした力強さ、肉体、そしてその怪力を持つ彼からはとても思えないほどの心の弱さを。
思わずクス、と笑みを零し静雄の少し痛んだ髪の毛を撫ぜた。

「…そんな事気にしてたのか。俺はそう簡単に壊れねぇよ」
「でも」
「本当に静雄はいい子だからな。いらねー心配までしちまうんだよな。むしろ、お前になら壊されたい」
「ばっ…?!トムさん何言って…!」
「こら、暴れんな。抜けちまうだろ」

そうなのだ。実は終わった直後なのでまだブツを抜いていなかったりする。
俺としてはピロートークを楽しみながらそのまま…と考えていたのだが、いい方向に事は運びそうだ。
こいつが可愛過ぎるのが悪い。何回抱いても初めてのような態度。仕草。艶のある喘ぎ声。やべ、思い出したら興奮してきた。
ガッチリと静雄をホールドしたのち、俺は本腰を入れてピストンを開始する。
中出しして時間経ってないから、滑りがいいのなんの。

「……ちょ、入れたままとかどんだけですか、今すぐ抜いてくださッ」
「んな色気ねーこと言うなって。ほれ、二回戦いくか?」
「や、やだッ、あ、あッ、動か、さな、いでッ」
「今度は枕じゃなくて、俺に夢中になれよ?」
「ひゃぁ!‥ァッ、ばかッ…!」

今度こそ自分にしがみ付いてもらうべく、今横になっていた枕を部屋の隅に力いっぱいぶん投げる。
今までできた女にだってこんな甘い台詞は吐いた事がない。
びっくりするぐらい、俺は静雄にベタ惚れだって事さな。
あー、すげぇ気持ちイイ。

(俺はお前に壊される事を望んでいるんだよ)



end.

since*2010.04.15 なか
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