ホットミルク



深夜の甲板にコツコツと足音が響く。
それはキッチンへと、近づいてきているようだ。

(珍しいな、こんな時間に)

サンジはそう思いながら、キッチンのテーブルにレシピを広げて整理していた。
普段はかけない黒ブチメガネを装着し、集中感を出させる。
気分はプリンスだ。

ガチャリ、遠慮がちにキッチンの扉が開く。
こんな時間には珍しい来客だ。

「どうした、クソマリモ。眠れねぇのか?」
「まぁな…。マリモはやめろ」
「じゃあただのクソでいいのか?」
「ガキかお前は」
「嘘だよ、俺のゾロ」
「バッ…、恥ずかしげもなくそんな事言うな!」
「嬉しいくせに、顔真っ赤だぜ?ゾロ」
「うっせぇよ!酒くれ、酒」
「ハイハイ、分かったからそこ座れよ」

散らばっていたレシピを片付けつつ適当にあしらいながら、冷蔵庫から牛乳を取り出し鍋で温める。
こんなやつに酒なんか出せるか。
酒がなきゃ寝れねぇなんて、どこのオヤジだよこいつは。
そんな奴には、これで十分だ。

「ほらよ、ホットミルクだ」
「酒は?」
「いつ次の島につくのかわからねぇのに、ポンポン酒出せるかよ」
「こんなもんじゃ眠れねぇ…」
「眠れるよ、俺がついてるしな」
「すっげぇ自信」
「当たり前だ、それにこのミルクには砂糖も入ってるし、疲れも取れるぞ」
「しょうがねぇな、飲んでやるか…。‥甘い」
「砂糖が入ってるっつったろ」
「……でも、旨いな」
「プリンス様お手製だからな」

くすっと笑いかけながら、ゾロの隣に腰をおろす。
横の照れ屋の剣豪様は猫舌なのか、ふぅふぅしながら可愛く飲んでくれている。

(キス、してぇ…)

不意にサンジの胸にそんな気持ちが浮かんだ。
思ったら即実行の男、サンジ。
ゾロが両手で抱えているマグカップにさらに上から手をかけて、唇にそっと口付けた。

「ン…、こら、まだ飲んでる」
「いいじゃねぇか…。そのつもりで来たんだろ?ここへ」
「……バレてたか」
「そりゃあな、前にセックスしてから大分経つ」
「いいんだろ?…サンジ」
「こんなに可愛くおねだりされて、断れる訳ねぇだろ。俺だって限界だ」

マグカップをテーブルに置かせると、サンジはゾロをきつく抱き締めた。
照れたようにゾロはサンジの顔を見つめ、ふいっと逸らした。

「…どした?ゾロ」
「そのメガネ、嫌だ…」
「ダメか?嫌いか?」
「……、格好よすぎて、駄目だ…」
「何可愛い事言ってんの」
「外してくれ…。俺はプリンスより、サンジの方が好きだ」
「…ゾロッ…!どんだけ俺を煽る気だよ…ッ!」
「煽ってんだよ…、好きだ、サンジ」

今日のゾロはやけに甘えただ。
多少昼間とのギャップに驚きながらも、ゾロの誘惑に負けサンジはゾロを抱えて傍のソファへ移動した。

「ン‥、ぁあッ」
「こうされるの、好きだろ?」
「ハァ…、好き‥」

ソファにゾロを押し倒して、股の間にサンジが膝を入れてゾロの股間を揺さぶる。
適度に自身が刺激されて、ゾロは息を荒くしながら小さく喘いだ。
快楽で潤んだ瞳でサンジを見つめながら、激しくキスを求め両腕を首の後ろに回す。
サンジがそれに答えて深く口付けた。

「ゾロの乳首、もう勃ってるぜ」
「…ッう、触…ッな」
「触ったら駄目なのか?触られるの好きなくせに」
「……ふぁあッ‥、もっと、弄ってくれ…ッ!」
「足りないくせに、触るなとか言うな」

耳元に顔を埋め、サンジがゾロの耳たぶをねっとりと熱い舌で舐め回す。
それから耳の裏にも舌を這わせ、カプリ、と耳を甘噛みしてやる。
耳を攻められるのが好きなのか、ゾロはビクンと体を震わせた。
舌はゆっくりと首筋まで伝い、そこを舐め尽くした後ジュッと吸い付いた。
綺麗な赤い痕が残った。

「サン…ッジ、耳はいいからッ…乳首ッ、弄ってくれよ…ッ」
「あんまり急かすなよゾロ、我慢出来なくなっちまうだろ」
「…一人だけッ、余裕ぶるなよ…!」
「余裕なんて、とうの昔に失ってるよ」

首筋に痕を残した後、乳首に舌を這わせ乳首をこねくり回す。
もう片方は指で、人差し指と中指で挟み、くりくりとゾロが好きなように愛撫してやる。
よほど嬉しいのか、ゾロは腰を揺らし大きく喘いだ。
あまり喘ぎ声がでかいと他のクルーが起きてしまうので、それはキスで塞いだ。

「ッふ‥ン、はァ…!」
「…ほんと、感じやすいよな。指挿れるから舐めろよ」
「ンぅ…、ぁ‥」
「上手だな、ゾロ」

サンジがゾロの目の前に人差し指と中指を差し出すと、ゾロはうっとりしながら舌を這わせ始めた。
室内には卑猥な水音が響く。
時折腰を揺らせながら、チラチラと合図するかのようにゾロはサンジを見上げる。

(まだか?まだか?)

いつのまにか、ゾロの舌づかいも何かに急かされる様に雑なものになっていった。
指もしっかり濡れたところで、口から指二本を引き抜きゾロをうつ伏せにさせる。
形のいい桃尻を手で撫で回しながら、ズボンと下着を一緒に足元までずり下ろし尻の割れ目に濡れた指を宛がう。
ヒクヒクと蠢くゾロのそこは、待ち望んでいたかのようにすでに濡れていた。

「なにもしてねぇのに濡れてる…。ゾロやらしい」
「っるせぇ…早く、挿れやがれ…ッ!」
「はいはい、慣らさないと痛いのはゾロだぜ?ちょっと位待て」
「…ぅア!」

ゾロの秘部は、サンジの細くて白いしなやかな指をずぷずぷと飲み込んでいく。
根本までしっかりと飲み込んだ事を目で確認すると、ゆっくりと引き抜いたり挿入したりする動作を繰り返した。
その度に喘ぎ声を漏らすゾロは、普段とじゃ比べ物にならないぐらい格段で艶っぽくてエロイ。
サンジ自身も無意識に息を荒くしながら、指を増やして中をぐるりとかき回す。
ある一点のポイントに触れた時、ゾロの体は大きく仰け反った。

「ぁあアッ…!、ふ、ッン‥」
「見つけたぜ。ここだな?」
「いや…ッだ、サンジッ…!ァアッ」
「嫌ならやめてもいいんだぜ」
「……もっと嫌だ‥ッ」

サンジが与え続ける快感に、はふはふと息を切らしながら真っ赤な顔をしてすがるゾロ。
ゾロがやめてもいいと言われて、一瞬だけ泣きそうになったのは誰にも内緒である。
中も十分にほぐれたところで指を引き抜くと、ゾロは自ら股間をぐいぐいとおしつけてきた。

「サンジ…ッ、もう…ッ」
「分かってるよ。力ぬいとけよ?」
「……ッぅぁアッ!」
「‥ック、キツイな…ッ」

ゾロの締りのよさに、一瞬サンジが快楽に顔を歪めた。
むこうにもっていかれそうになるのをぐっと堪えて、ふとゾロの顔をみやる。
汗びっしりの額が目に入り、空いた手で額に張り付いた前髪をかきあげてやる。
サンジと目が合い、ゾロはさらにかあっと顔を一層赤く染めた。

「全部入った。…動いていいか…?」
「聞くな…バカ眉毛…ッ」
「いいんだな?啼け死ね、ゾロ」
「……!!!」

耳元で特有のハスキーボイスで囁かれ、ゾロは堕ちた。

*  *  *

気を失っていたのか、ゾロが目覚めると夜が明けていた。
しかも、昨日はキッチンにいたはずなのに今はしっかりと格納庫の床に寝かされている。
ぬくもりに気づき隣を見ると、サンジがまだ寝ている。
…ということは、まだ朝の早い時間か。
気絶するまでやられちまうなんて、煽りすぎた。とゾロが反省しながらサンジを見つめていると、サンジの閉じられた瞼が震えた。
ゆっくりと開かれると、二、三度瞬きをして青い瞳にゾロが映された。

「おはよう…ゾロ」
「…おはよう、サンジ」
「先に起きてるなんて珍しいな」
「…目が覚めちまったんだ」
「腰は大丈夫か?昨日はちょっとばかしがっつきすぎたぜ」
「…大丈夫なわけねーだろ。立てねぇよ、責任とれ」
「了解。朝食は和食でよろしかったですか?お姫様」
「ん、問題ない。もってこいよ、ここまで」
「もちろん」

互いに笑い合い、互いに頬に口付け合う。
サンジは起き上がり、スーツを着込む。支給が終わったらまた来る、と残して去っていく。
どうやら眠れない夜は解消されたようだ。
まさか眠れなった原因が欲求不満だったなんて…、とゾロはサンジの後姿を見てまた頬を赤く染めた。


end

since*2006.10.19-2006.12.27 水沢
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