看病と熱と君の温度2



呆然としながらも、このままではいけないと思い寝ていたチョッパーを起こして看病にあてた。
俺は目頭が熱くなるのを堪えながら、キッチンで眠れぬ一夜をあかした。

もう出てけ

いっつも色んなきついことを言われているけど、こんなに単純でグサリときた言葉は初めてだ。
ゾロが起きたら、土下座して謝りに行こう。

「…ン、もう朝か…」

キッチンのテーブルに突っ伏していた顔を上げると、辺りはもう明るかった。
知らないうちに朝を迎えてしまったらしい。
朝飯作らないと…。そう思い立ち上がり、コンロの前に立ったら扉をあけて誰かが入って来た。

「サンジ、ゾロの目が覚めたぞ」
「チョッパー…」
「何言われたのかわかんないけど、仲良くしなきゃだめだ」
「…したくたって、できねぇんだ…」
「……水、持ってってやってくれないか?俺の手からじゃ飲まないんだ」
「ありがとう、チョッパー。持っていってやるよ」
「頼むよ、サンジ」
「おう!」

チョッパーが時間をくれた。
謝ろう。ゾロに。
大きなピッチャーに入った水を抱えて、俺はゾロの待つ部屋へと向かった。

「ゾロ」
「またお前か…出てけよ」
「聞いてくれよゾロ」
「聞く事なんかねぇ」
「ある!聞いてくれ…」
「……なんだ」
「悪かった…ゾロ。ほんとにゴメン」
「サンジ…、頭あげろ」
「ゾロが許してくれるまであげない!ゾロ悪かった!」
「…あー!‥、もういい、許す。俺もきつい事言って悪かった。具合が悪くてイライラしてたんだ」
「……許してくれるのか?」
「あぁ、許すよ。お互い様だ」
「よかった、有難うゾロ!」
「うわっ、抱きつくなって!コラ、…ゴホゴホッ」
「ゴメン、つい嬉しくて。ほら、水飲むか?」
「飲む…」

さらっと許しを得た所で、俺はゾロに水を飲ませる。
もちろん、口移しで。これほど嬉しい事はないな。
普段はキスだって頑なに拒絶するゾロが、こうもあっさりと口移しを許すなんて。
ゾロが水を飲んだのを確認すると、ゆっくりとベッドに寝かせてツンツンヘアーを撫でた。
固そうに見える髪質だけど、実はとっても柔らかくて気持ちいんだ。
俺だけの特権、って思ってる。

「ゾロ、体調はどうだ?」
「昨日よりは大分いい…。鍛錬してぇ」
「ダメだ。ちゃんと治してからじゃないと、俺が許さない。チョッパーもだ」
「分かってるよ。けど、やる事なさ過ぎて退屈なんだ」
「普段も寝てるんだから、今も大人しく寝てやがれ」
「寝るのも飽きたぜ」
「しょうがねぇな、体でも拭いてやるよ」
「おお、ありがてぇ。昨日風呂入ってなかったから、気持ち悪かったんだ」

俺はバタバタと風呂場からお湯を汲んで来ると、ゾロが寝ているベッドに腰掛けてゾロの服を脱がせた。
微熱な体なのか、ゾロの胸板はちょっと熱い。
タオルをお湯にくぐらせて絞り、そっと胸を滑らせた。

「…ンッ」
「なんだよ、感じてんのか?エロ剣士」
「うるせ…、そういう拭き方してるのは誰だよ、ダーツ眉毛」
「可愛げのねぇ奴」
「あってたまるか」

互いにプッ、と笑いあってからなんとか体拭きを終了させると、俺はお湯の入っていた桶を持って立ち上がった。

「また昼頃様子見に来るよ」
「次は粥でももってこいよ。あと酒」
「テメェは禁酒だ」
「そりゃ参ったな」

また噴出して笑いながら、ゾロは再び寝入り、俺はキッチンへと戻った。

「ゾロの様子どう?」
「あぁ、大分いいみたいですよナミさん」
「良かったわ。あー見えても、大事な戦闘員ですものね」
「サンジ!メシ〜!!」
「っるせぇクソゴム!今作ってるよ!」
「サンジも風邪うつってないみたいだし、あとは回復を待つだけだな」
「有難うな、チョッパー。やっぱりお前は最高の医者だ」
「う、嬉しくねぇぞコノヤロォ!」

「照れてるのね」
「照れてるんだな」

この翌日には、元気に船尾で串だんごを振り回している未来の大剣豪の姿があった。


end.

since*2006.10.01〜2006.10.19
水沢
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -