セツナレンサ



○阿部side○

「阿部…寝てるか?」
「いや…。何、お前も寝れねぇの?」
「…ちょっとな…。…なぁ、外出ねぇ?」
「別にいいよ。皆起こさないようにな」
「おう」

合宿三日目、何故か目が冴えて眠れなかった俺に、花井が声をかけてきた。
真夜中、皆が眠っているから囁くような声でそっと。
むくりと体を起こして、俺と花井は外へ出た。


寝巻きのジャージのまま外へ出て、外にあった木のベンチにそのまま並んで座る。
さっきから花井の様子がおかしい。
花井にしては珍しく、ずっとそわそわして落ち着かない。
俺は気になって花井に問いかけた。

「花井、なんかあったのか?」
「…や、あの、さ!…こ、ここだけの話なんだけど…」
「ん?」
「お、おれ!見るつもりは無かったんだけどさ、見ちまって…」
「何を…?」
「さ…栄口と、水谷がその…」
「あー…。ご愁傷様」

見ただけで、こんなにも動揺するもんなのか?
内股に手をいれて、もじもじする仕草。頬を真っ赤に染めて、瞳を潤ませて俯いて。
明らかにおかしいよな。これ絶対。
クソレフトも大概にしろよな本当。TPOを考えろ。

「あのさ、俺も見ちゃいけないもん見ちまったんだけど」
「え…?」
「…お前の、それ。勃ってんだろ?」
「あッ…!」

おもしれぇなこいつ。
花井は瞬間、ボボボッと顔を真っ赤にさせてそっぽを向いてしまった。
手は相変わらず内股を押さえている。体が火照って仕方無いのだろう。
便所にでも行って処理すりゃいいものを、こいつは人がいいからオナニーにすら抵抗を感じているのではないのだろうか。
一つの考えが、俺の脳の中を過ぎる。
後から考えると末恐ろしい事だというのに、その時の俺は自重出来なかったようだ。

「花井」
「…なんだよ」
「俺が鎮めてやる」
「は?」
「…それ、抜いてやるっつってんだよ」
「い、いいよッ!ていうか何考えてんだよ阿部!」
「気になったんだから仕方ねぇだろ、チンコ出せよ」
「ちょ、ちょっと阿部…ッ」

酷く動揺している花井を尻目に、俺は花井のジャージから花井自身を引きずり出した。
俺の発言のせいで萎えているかと思ったらそうでもなく、きちんと勃起して先端からはぷくりと我慢汁がにじみ出ている。

「お前の、結構でかいんだな」
「うッ、うるせぇよ!…つうか、どうせならお前のも出せよな…。俺だけじゃ嫌だ…」
「分かったよ。そんじゃついでに俺のも擦るか」
「…阿部のもでか…ッうァ、」

俺もするなんてそんなつもりはまったく無かったのだが、花井に言われたのならば仕方無い。
自分のも取り出すと、花井に近づいて両方の自身をピトッとくっつける。
そして、根元からゆるゆると扱いていくと花井からは艶っぽい息が零れた。
外には、はぁはぁ、と互いの荒い息遣いだけが響いている。
ちらりと花井の方に視線を移すと、感じて戸惑っているのかキュ、と眉間に皺を寄せて吐息を漏らしていた。
目の前にこんな奴がいられたんじゃ、さすがの俺だって興奮する。
けれどなんだか悔しい。なんで、なんで。

(ハゲででっかくて眼鏡なのに、なんでこんなにも惹かれるんだ…!)

不覚にも俺は、花井に対して酷くドキドキした。
先っぽをちょっと擦っただけで、あられもない声をあげる花井に。
何でこんなにもドキドキしているんだ…。
やがて俺はひとつの答えにたどり着く。

「そっか、エロいんだ…」
「は…?」
「花井…、お前…ッ、エロすぎ…ッ」
「…んだよそれッ‥、ァ、やだ、あべッ‥!」

思わず声に出してしまっていたようだ。
でも気にしない。だって本当の事なのだから。
先にイってしまいそうで、俺は花井のモノを掴んでいる手の動きを早めた。
やっぱり聞こえてくる声は艶っぽくて、下半身がズクリと疼いた。
花井の、いつの間にか誘うように揺れている腰、口の端から飲み込めずに伝っている涎、快楽で歪んだ顔。
エロい要素満点すぎる。
チッ、と舌打ちして、俺はラストスパートをかけるように花井の先端に爪を立てた。

「ハァッ‥、あべ…ッ、やばい‥でるッ、」
「…くッ、俺ももう…ッ」

花井が掠れた声で訴えてくる。
プシュッ、とお互いの自身から精液が飛び散った。


* * * * *


「落ち着いたかよ」
「…るせぇ」
「照れなくてもいいだろ、抜きっことか普通だって。アダビ鑑賞会とかするだろ」
「しねーよ!ぬ、抜きっことか普通じゃねーよ…しかもなんで阿部と…」
「たまたま気づいたのが俺だったんだから仕方ねーだろ。もうしねーから安心しろ」
「…うん…」

一瞬残念そうな表情の花井が目に留まる。
…あれ?何で残念そう…?これはちょっとした手違いで起こった出来事なのに。
もしかして花井もまんざらじゃないのだろうか?

「花井」
「…何」
「好きだ」
「え?」

あれ、俺今なんつった?口が勝手に滑ったんですが。
花井は呆けた顔でこっちを見ている。
あれ、俺ひょっとして…。

やっちまった…?

三星戦を前にして、俺の中ではひとつの恋が始まろうとしていた。


end.

since*2008.02.24

水沢
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