一世一代の告白大会



○花井side○

俺は高校に入ってから、ずっと田島が好きだった。
どこが好きなんだと言われると困るけれど、とにかく俺は田島が好きだった。
友達としての「好き」と違うと自覚したのは、俺が田島で抜いてからだ。
初めは戸惑ったけど、田島で、田島の声で興奮するのだから仕方無い。
一度思い切って抜いてしまってからは、もう止まらなかった。

廊下ですれ違う度、屋上で皆で集まって弁当を食べる度、部活で顔を合わせる度、田島と目が合った。
意識してるのは俺だけかもしれない。
田島と目が合う度、体が熱くなってしまうのはどうしようもなかった。
ゴールデンウィークの合宿の時だって、隣同士で寝た時は本当にどうしようかと思った。
田島は寝相が悪い。
ゴロゴロとこちらへくっついて来て、ドキドキと煩い心臓の音が聞こえてしまうかと思った。田島は眠っているのに。
自分も寝相が悪いふりをして、田島に抱きついてしまおうかと何度も思った。
三星の試合の時だって、惚れ直したんだ。

『俺はどんな球でも打つよ!』

凄い。格好良い。頼りになる。純粋にそう思う。
このもやもやした気持ちを、何度も田島に打ち明けようと思っては留まった。
だって普通に考えて、男が男に告白されたっていい気はしない。
むしろ、気持ち悪いと思う。
さらに追い討ちをかけるのは、俺の姿。
でかくて坊主で、田島が恋愛対象である『女』とはずいぶんかけ離れている。
そんな男が、「すきだ」と言ったって、普通に気持ち悪いだけだ。

(おまけに、俺はお前をオカズにしている男だ…!)

毎日毎日胃が痛くなるほど悩んだ末、やっぱり俺は思いを告げる事に決めた。
もうすぐ夏大だ。その前に、自分としても決着をつけたい。
けれど、ストレートに告白なんてする勇気は無い。

(なら…!)


*  *  *  *  *


「田島!」
「…花井?」
「ちょっと話があるんだ…。屋上まで、来てくれるか…?」
「おう!」

いよいよ決行の日。
俺は放課後、田島を屋上へと連れ出した。
お互い向き合って、顔を見合わせる。
田島が、「なんだ?」と首を傾げた。
俺は尻のポケットから、薄っぺらい白い封筒を取り出して田島に差し出した。

「何?これ」
「…お前に、って頼まれたんだ」
「……これ」

渡した瞬間、ガサガサと田島が封筒を開いて中身を見ている。
そして中の手紙に目を通した途端、田島の顔つきが変わった。
自分の顔が真っ赤なのは、分かっている。
俺は少し躊躇った後、思い切って言った。

「ラブレター!‥頼まれたんだ、花井アズサに!」
「…花井‥ッ!!」
「うおッ」

そしたら田島の奴は、めちゃくちゃ嬉しそうに目を見開いて俺に飛びついてきた。
…あれ、嬉しそうって事は…田島…?

「俺ッ、嬉しいよッ!俺、ずっと好きだったんだ!花井の事!もう諦めてたのに、まさか花井も好きだったなんて!」
「…まじで…?本当か?からかってないよな…?俺の好きは、友達だから好きの好きとは違うんだぜ?」
「知ってるよそんな事!花井にチューしたいって思うのは、花井が思ってる好きと一緒だろ?」
「‥う、ん…たじま‥ッ」
「チューもしたいし、エッチもしたい!花井の事、いっぱいいっぱい愛したい!ゲンミツに!」

えっと…ごめん、俺、なんか泣きそうだ。
そんで田島から、さらっと凄い言葉がバンバン出てきたような気がすんだけど…。
気づいたら俺の体は、田島に羽交い絞めにされていた。
ダメだ、そんな密着したら…!か、体が熱く…!

「そんじゃとりあえず、今日は一緒に帰ろうな!試験前で部活も無いし!」
「お、おう…!」
「そんで、俺んチ来いよな?」
「…え?」
「コイビトドウシ、って奴になったんだろ?今日は花井の事、帰したくないんだよね!」
「…ッ、馬鹿言えッ!明日も学校だっつの!」
「ちぇーッ」

とりあえず、手を繋いで一緒に帰る所から始めるらしい。
急に強気になった田島に推される俺はどうなるのやら。
ひとまず、俺の告白は大成功って事で…?


end.

since*2008.01.25

水沢
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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